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ハイビスカスのシールの話をした後はしばらく沈黙が続いた。


やっぱりこの人はもともと喋る方じゃないんだ。



「次の信号交差点を左に」


「はい」




私は所内の時から立ち上がりが悪いと言われていた。免許を取ろうというのにハンドル操作が苦手で…。




交通も混雑してたから左折後に軽くアクセルを踏んだ。


のに車は意外な速さで進んで。



「おぉ!」


「『おぉ!』って…」



笑われた。かなり恥ずかしい。


猫かぶるつもりはこれっぽっちもないけど、だからといって素の出し過ぎは恥ずかしいにも程がある。





三國大在籍という理由だけで大学周辺を運転する羽目になった。

かなりの初心者があんなに人通りの多い道を行くには危険過ぎる。



「あの、何かハードル高くないですか?」


「んー…ていうかウチ周辺はどこも難しい道ばっかりだからね。」



一理ある。どこ通っても心臓に悪い。




正門前を通り過ぎた辺りで助手席から視線を感じた。


「香西さんって三國大の一年なんだ」


隣を見る余裕なんてない。



「香西さんはどっちから来てるの?正門?通用門?」


「あー…地下鉄なので正門です。」


「ちょっと待って。どこ住んでんの?」


「下山です」



「…は?」



来ると思った。

先生にも、友達にも、先輩にも、何でこっちじゃなくて下山なのか言われる。しかも自転車で来れば良いものを地下鉄で、とか。




予想通りの反応がちょっとおかしかった。

スルーされるどころか食いついて来て、今までになかったノリで話が進んでいく。


「だから、下山です」


「自転車で来いよ」


「自転車持ってないです」



「買えよ!」



彼が笑っている。そこまでおかしいか。

私にとっては周囲と全く同じ反応をする彼の方がおかしい。



「買ったところで無理ですよ、私方向オンチですもん」


彼は軽く咳ばらいをした。呆れられたんだろうか…いや、明らかに笑っている。小ばかにされた気分だ。


「あのさ、下山から三國大までは直進、左折、直進なんだから迷わないって」


今度は一つ上の姉と全く同じ事を言って来た。


「みんなそう言うんですよ。どうやったら迷うんだよ!みたいな…

自分でもわかんないんですよ、何で迷うか。でも迷うんです。」




仕方ないじゃないか、方向オンチになりたくてなったわけじゃない。



確か最後の方に経路設計があったな…気が重い。


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