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ちらつく程度だった雪がまたひどくなって来た。
原因は明白。俺の横にゆきんこがいるからだ。
「教習所に近づいて来たらまた雪が…。
香西さんが乗ってるからだし!」
いじる内容が増えると会話率が増えるので、心なしか嬉しい。
「たまたまです!たまたま!」
彼女が慌てて否定すると軽くため息をついた。
「…もう、昨日大変だったんですよ」
彼女の言葉に黙って耳を傾ける。
「お姉ちゃんが鍋したいって言ったから具材買って、傘がなかったから雪にまみれて帰ってたら、知らない人から『重そうだね、傘ないみたいだし家まで送ってあげるよ』って言われて」
「で、もちろん?」
「逃げました」
「え、怪しい人だったの!?
爽やかに『どうぞー』とかじゃなくて!?」
ナンパか?
まあ今の話を聞いていると、爽やかに言って来たとしても許せない。
彼女が無事に俺の隣にいてくれてかなりほっとした。
「とんでもないとんでもない!ダッシュで帰りました」
「はー…そりゃ危なかったね」
家まで送ってあげることが出来たら良いのにな、と思う。
駐車措置を終わらせた時、時計は既に終了時刻を過ぎていた。
だが俺は次回の指示を出しつつも、ギリギリまで彼女と会話を続ける。
「次はセット教習で学科も一緒にあるから。
指導員は選べないから注意してね」
セット教習の次も指導員を選べない技能教習。つまりまた暫く彼女に会えなくなる。
寂しい?
聞こうとするが「そんな訳無いじゃないですか」とか言われたら撃沈するので言わないでおこう。