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教習所に近づくにつれてまた雪がちらついて来た。さっきまでは雪止んでたのにな、と思う。
「香西さんの地元に国立大あったよね?」
市内にあることは確かだけど、何区にあるかは定かではない。
「確か…隣の区でした…多分」
彼が横で肩を震わせていた。
「…香西さんの言葉信用ならないね」
そこまでか、と思う。確かに地元でもわからない場所なんてたくさんあるけども。
「確か日産の工場とかあったよね…小学生の時工場見学とかしたもん。
あれは感動したよ。あの部品がここで作られてるのか!とか」
知らなかった。日産の工場なんてあったんだ。
彼は私よりも地元を知っている。
「ほー…」
「ほー…って興味ないだろ!」
興味がないこともない、と言えば嘘かもしれない。でも私は相槌を打っただけなのに。
「そ、そんな事ないですよ!」
「女の子っていっつもそう!車とか乗れれば良いって感じよね。
車に求めるのは可愛さと乗りやすさでさ、早さとか性能なんてどうでも良いとか言う人もいるからね…。
車とかピンク色の買うとかね」
「や、私ピンク無理です」
無理無理。ただでさえ可愛くないのに、ピンクの車なんて気持ち悪さを倍増させるだけ。
そう思ってたけど、彼の反応は意外だった。
「あ、そうなの?」
「何て言うかこう…」
「女の子女の子したのが無理なんだ」
似合わないもん、と心の中でつぶやく。携帯なんて見せれたもんじゃない。
「俺の知り合いにも男っぽい奴いるけどさ」
『にも』って…文脈判断すれば遠回しに男っぽい奴って言われたようなもんだろうか。少し傷つく。
「でもそういう女の子の方が好かれるんだよね」
だからこんなフォロー正直嬉しくない。
「へー…でも私色々あって携帯ピンクなんですけど、あと一ヶ月我慢すればやっと開放されるんですよ」
とりあえずこの先ピンクの物を持たないでおこうと誓った。
ただ何かさっきの言葉が気に入らなかったので反論しようとした。
その時だった。
「…あのさ、いっつも思ってたんだけど」
またか。今度は何だろう…今日の教習はいつにも増して心臓に悪い。
「香西さんって俺の高校の時の副担任に似てるんだよね。顔とか声とかイントネーションとか」
今度はそっちか。
ただずっと彼がマジで似てる、と連呼するのでびっくりする。
…あ、でも大学の友達にも地元でそっくりな友達いるよ!って言われたこともあったな。
「そうなんですか?」
「何でだろ、同じ系統の顔だからか全部同じに見えるんだよね」
「同じ系統って…」
何だその表現。思わず笑ってしまう。
「いやいやホントに
音楽の先生だったけどすごい似てる」
「…そんなに?」
どんな先生なんだろう。
少なくとも女の先生であることを期待したい。