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「バイトって何してるんだっけ」


何と答えようか迷う。飲食店の調理スタッフと、歌のインストラクターと、イベントコンパニオン…あー、説明が面倒臭い。


「まぁ…色々と」


「そんなにやってんの?何に使うのさ?」


「そりゃ留学費ですよ」


「あ、フランスの?」


「全額なんて出してもらえないし、かと言って全額準備するのは無理だから…自分で稼げるだけ稼いで、足りない分を出してもらいます。

でも出来るだけ親に出してもらう額はゼロに近いようにしたいです」


この春休みにまずいくら稼げるんだろう。この一年で軽く50万は稼がないと…。


「でもさ、俺の娘がそんな感じだったら絶対出してあげる…全額は無理だけど。

努力もしないで金だけ要求されたらそりゃ絶対出さないけどね」


感心してくれてるのに何か引っ掛かる。

…娘いるのか…?いやいや、例え話だ。私が娘だから。






「香西さんさ」


彼の呼びかけに目線だけ横に向ける。


「注意するとこはちゃんと注意して、きちんと目配りして安全確認できてるけど、香西さんの運転を一言で表すと…『遅い』!

何でそんなに幹線車道遅いんだよ!?出せよ!」


横で彼が笑っている。

笑い事じゃないし。どれだけスピード出すの怖がってることか。


「うぅ…」






横で珍しく彼がそわそわし始めた。


「そう、ずっと聞きたかったんだけどさ」



え?



何を言われるんだろう。『香西さんて何人?』『いつからそんな変人なの?』

被害妄想しか出来ない。


「香西さんって俺指名してるよね?」


「はい」


そっちか。

でも何か緊張して来た。今までのおちゃらけた感じとは違う、落ち着いたトーンで彼が問いかけてくる。


「すごい嬉しいんだけどさ、指名してもらえるっていうのは…でもさ、そもそも何で俺なの?」



何で?


焦って理由を探す。楽しいから?落ち着くから?指導が上手いから?


理由なんてない。あるとすれば『内村さん以外は嫌だったから』だ。



そんな事を言えるはずもなく、適当な事を言う。変に黙ってても変に思われるだけだ。


「…何て言うか、今までで一番合ってたんですよね」


「へぇ」


「今まで当たったことのある指導員の中で一番やりやすかったっていうか」


あながち嘘でもない。確かに一番私に合ってるし、一番やりやすい。

その理由がもとを辿れば『彼に惹かれている』から。


…それは胸の内に秘めておく。



「初回あれだけぼろくそ言ったのに?『遅い!』とか」


彼がふっと笑った。


「ん、でもやっぱり一番やりやすかったです」




きっと初めて会ったときから彼しかいないと思ったんだろう。

…いや、二回目か。


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