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何とか中止にならず一時間が終了した。
でも相変わらず雪がひどい。
「今日スクールバス出るかな…」
え?という顔をこちらに向ける。所内を走ってるせいかいつもより余裕があるみたいだ。
「スクールバス出なかったらどうやって帰るの?」
「地下鉄…で」
あんな近距離を時間かけてか。
思わず笑ってしまう。
「歩いて帰ったら良い」
「む、無理無理!帰り着く前に凍死しますって!」
これだけ笑えば十分暖まるか。
「あ、明日あんまり雪ひどかったら教習中止になるからね。
規準は市営バス。止まったらウチも休校だから」
「わかりました」
所定の位置に駐車しながら話を続ける。
「次もどうせ俺でしょ?
この項目復習にしとこう」
彼女が黙って頷く。
前に復習について話したことがある。
復習項目がついたら落ち込む生徒がいるらしいが、彼女もその一人らしい。
なんでも『私出来ないんだなぁ…』って思うそうだ。
ついフッと笑ってしまう。
「復習がつくと落ち込む香西さん」
俺の呼びかけに横に首を振って答える。
「そこまでないですって!」
「でもこの辺へこんだんだろ?」
一段階の時の技能のページを指す。
2、3回同じ項目が復習になっていた。しかも数項目。
彼女がためらいがちに頷いた。
何なんだ、この生き物は。可愛いのに面白い。
最後の最後までいじらずにはいられない。
「明日何限?」
「えっと…2限です」
「そしたら明日朝から大雪だな。香西さん来るんだもん」
「た、たまたまなんですって!
私は関係ないですよ!」
「明日来る時何か嫌な予感がするんだろうな…」
「ひどい…」
嘘に決まってるじゃないか。楽しみで仕方ないんだから。
軽く笑って仮免許証を返す。
「お疲れさまでした、忘れ物ないようにね。
じゃあまた明日。気をつけて帰ってね」