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来ていたジャケットを脱ぎ、シャツのボタンをあけてネクタイを緩めた。
もう初夏の時期。彼女の家の前に停めた車は汗ばむほどに暑い。
車の窓を開けて発車させた。心地よい風が車の中に入ってくる。
「それにしてもさ、思ってた以上に好感触でよかった」
彼女は風になびく髪をかきわけてこちらを向いた。
「そうなの？」
「うん…お義父さんに『今日籍を入れても良いぞ』って言われた」
彼女はその言葉を聞いて怪訝な顔をした。今にも『はぁ？』という声が聞こえてきそうだ。
「お父さんそんな事言ったの？」
「うん。俺めっちゃ仲良くなったし」
「あ、そう…」
笑ってるような、呆れてるような。そんな彼女を横目でちらっと見た。
「まあ結果オーライじゃない？これで俺ら無事結婚出来そうだし」
「そうだけど…時期も決まってないでしょ？」
「…まぁ」
彼女は窓から外を眺め、ふっと軽く息を吐いた。
「私はいつでも良いよ、新一さんの都合に合わせるから。仕事忙しくなりそうでしょ？」
「まぁ…でも遅くとも半年内には」
「じゃあ早くお金貯めなきゃね」
彼女が悪戯っぽく笑った。俺はちらっとそれを見てくしゃっと頭を撫でた。
「さーて、今からどうしますかね」
「どうしましょうかね」
彼女が髪の毛をかきあげながら言った。ちらっと彼女の方に顔を向け、ハンドルをぽん、と叩いた。
「ドライブしませんか、お嬢さん」
「どこまで？」
「さあ…気が向くところまでかな」
俺の言葉に彼女が笑い出した。愛しい笑顔が俺に向けられる。
「適当ね」
「じゃあどこ行きたい？」
「お任せします」
「了解」
そして俺はハンドルを右に切った。俺達の旅路はまだ始まったばかりだ…この表現が合ってるかわからないが。
楽しいことも苦しいことも二人三脚で頑張っていこう。これからもずっと。
