-228-
「お前は香西さんとの結婚を考えてるんだよな?」
お父さまの突然の言葉にどきっとした。何を言われるのか正直怖い。
彼は私の手を持ったまま、真っすぐと前を向いて頷いた。
「うん」
「昔も香西さんとお付き合いして結婚を考えたんだよな?」
「まあ」
体に穴が開きそう。それほどに視線を向けられて、私は思わず顔を反らした。
とその時、お父さまが朗らかな感じで声を上げて笑った。
「二回も惚れたなら仕方ないよなぁ?」
「は?」
思わず彼と同じように声を出しそうになった。呆気に取られて言葉が出ない。
「お父さん!」
慌てながら近づくお母さまをよそに、お父さまは彼に微笑みかけた。
「お前にしちゃ女を見る目あるじゃないか」
「何だよその今までありませんでした的な言い方」
「そういう意味じゃないけどな。まーでも二回も惚れたなら認める以外ないんじゃないか?母さん」
「え?」
今度はお母さまと同じように声が出そうになる。何だか意図が読めない展開に頭がぐるぐる言っている。
「まあ…香西さんがこんなどら息子で良いなら…」
お母さまの言葉に彼は苦笑していた。
「誰がどら息子だ」
内村親子のやりとりに緊張感が抜け、思わず笑ってしまった。
「とんでもないです」
内村一家の視線を一気に浴びたのももろともせず、彼に微笑みかけた。
「新一さんは仕事にも真摯で、プライベートでも頼れる存在で…私にはもったいないほどの男性です。ご両親が認めて下さるのなら、私は一生新一さんに添い遂げるつもりです」
何だか彼にプロポーズするみたいで、恥ずかしさをごまかすようにえへへと笑ってみせた。
すると、ご両親がにっこりと微笑み合い、お父さまが私に話し掛けた。
「香西さんは下のお名前なんでしたっけ?」
「あ、はい、薫と申します」
「薫さん、新一を頼むよ」
「新一、薫さん泣かせるようなことがあればひっぱたくからね」
思わず彼の方を振り向くと、彼もきょとんとして私の方を見ていた。彼はそのあとふっと笑って私の肩を抱いた。
「大丈夫だって、薫は絶対俺が幸せにするから」
「不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
新しいお父さんとお母さん。嬉しくて嬉しくて、気持ちが高揚してくるのが分かる。
次は我が家。




