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やわらかな日差しが俺を照らした。眩しさに眉間にしわを寄せながら起き上がる。
夢だったんだ…そうだよな、こんな簡単に彼女とヨリ戻せる訳がない。
はぁっと溜め息を吐き、ベッドから出る。そこに広がる光景に思わず固まってしまった。
どう見ても彼女の部屋。雑然とした俺の部屋とは似ても似つかない。
そして、テーブルには綺麗な字で書かれたメモが置かれている。
『おはようございます☆
今から仕事に行ってきます。朝ご飯は冷蔵庫にあるので温めて食べて下さい。あと家にいるなり帰るなり好きにして下さい。』
突っ込みどころ満載だ。
まず良い年して星マーク使うってどうなんだ。しかも『好きにして下さい』の文とかぶっちゃけ可愛げなさすぎ。
と、ここで我に返った。そうか、あれは夢じゃなかったんだ。この年になっても恋い焦がれ続けた彼女とようやく一緒になれたんだ…今だに実感が湧かない。
結果いつも同じ結論になるが、こうなるんだったら最初から彼女を手放さなければ良かった。そうすればきっと、美幸たちが言ってたような家族像がすでに出来上がってたはずだ。
まあ今あれこれ言ったって仕方がない。台所へと向かい、冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中まで綺麗に整頓されている。性格出てるなあ…と思いつつラップのかけられた皿を取り出した。が、中身を見て眉間にしわを寄せてしまう。
朝からカレー…確かに俺は今日仕事はないが、だからってこれは胃がもたれそうだ。
苦笑いして携帯を手に取る。まだ10時になってないから仕事は始まってないはず。
しばらくコールした後、彼女がようやく電話に出た。
『もしもしー?』
「おはよ」
『おはようございます』
「カレーって意味わかんないんだけど」
『ん?朝ご飯ですか?』
それ以外に何があるんだ。思わず突っ込んでしまう。
「朝だからってボケないで貰える?」
『ボケてません!』
「そんなにムキにならなくて良いじゃん」
『むぅ…しかも意味わかんないのが意味わかりません。朝カレー知らないんですか?』
「知ってるけど…何かがっつりじゃない?」
むーん、と電話の向こうから声がした。思わず笑ってしまう。
『もう!そんなに言うなら食べなくていいです』
「怒るなって。有り難くいただきます」
『そりゃどうも』
可愛いなぁ…俺の期待どおりの反応をしてくれる彼女が可愛くてたまらない。またあの楽しい毎日が帰って来たんだ。
「お礼はまた家でね」
相変わらずよくわかってない彼女がはあ、と言った。