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昨日携帯で教習案内を見たときはどれだけ安堵した事か…。
今日の担当は指名していた通り、内村さんだ。
何だか昨日の夜から考えただけでも笑みがこぼれてしまう。
何を隠そう、昨日偶然にも会ったからだ。
しかも意外な形で。
昨日は6時から、セット教習以外では最後の学科授業を受けた。
まだ試験期間中で、しかも翌日は必修のフランス語だから来る前も勉強、帰ってもまた勉強。
正直疲労感が隠せない。
携帯にメールの着信がある。…部員からか。
携帯をいじっていると、添乗員らしき人がドアに手をかけた。
今日は若い人みたいだなー…。
次の瞬間、目に入って来た光景に絶句した。
『お疲れさまです、どちらまで…』
彼だ。疑いようもなく、彼なんだ。
彼もまたびっくりしていた。
『おぉ…久しぶり…。
…どこまで行くの?』
『下山…パレスまで…』
正直あの後のバスの中では何故彼が運転してるのか、嬉しいやら疑問が拭い去れないやらで大変といえば大変だった。
少し残念だったのは、私の他に二人生徒さんが乗っていたこと。
逆に嬉しかったのは、目的地に着いたときにわざわざ運転席から身を乗り出すように後ろを振り返り、挨拶してくれたこと。
何を言われるだろう。
住んでるところか、何で昨日私がいたのか、彼がドライバーになってた理由…。
何にせよ言いたいことがある。
昨日の帰り、バス路線を無視したでしょう、と。
確かに家からの最寄りのバス停は下山パレスだ。
でも昨日は何故か家に一番近い通りの真横を経由して到着した。普段通ることなんて絶対ないのに。
あそこを通ったときどれだけバスを停めたかった事か…。
決めた。今日はいつもいじられてる分言い返してやろう。