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技能予約の指導員を見てがっくりきた。
嫌な人に当たったもんだ…。
私、香西薫は古野ドライビングスクールに通い始めて3ヶ月経つ18歳。
呆然と教習カードに印刷された名前を見る。
『1/7 7時限 内村新一』
一段階で当たったことのある指導員。
あの時間はイケメンが苦手な私にとって苦痛でならなかった…。
ただでさえ運転を始めたばっかりで下手にも程があるのに、指導員がかっこよかったらなおさら恥ずかしい。
しかも若干手間取ったら「こらこら」って言って横からハンドル修正して、あとは進路指示を出すだけ。
そう、あとは何も喋らない。
退屈そうに横に座って、仕方なく教えてる感じ。
嫌な人ではないんだろうけど、何かいたたまれない。
最悪だ。
今まで担当指導員を見るたびにホッとしてたのに、遂に来てしまった。しかも路上に慣れてない、また下手な状態で。
きっと向こうは生徒が多すぎて私の事なんて覚えてないだろうから、笑顔で挨拶を済ませた。
でも私が『この人苦手です』オーラを出しているせいか会話はない。
すると彼はすっと前方の車を指差した。
「あ、花が咲いてる。ホラあれ。」
小さなピンクのハイビスカスのシール。
たまに見る光景だ。
「俺絶対あんなの出来ない!恥ずかしいもん!」
彼の主張に思わず笑ってしまった。
「剥いでも跡残りますしね」
車内の雰囲気が明るくなった気がする。
彼、意外と喋ってくれるんだ。
教習車内の時計は開始10分を指していた。