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元々冷え性の私にとって、彼の手はすごく温かかった。


私の全てを包んでくれるような温かさ。私はそれが大好きだった。







でも私はいまだにどっち付かずの態度を取り、彼も谷原さんも困らせている。それに、彼に全ての責任を擦り付けていたのも私。



私には彼を思う資格は、ない。




それをわかっていながら彼の手を離すことが出来なかった。


自己中とかわがままとか、そんな自分に嫌気がさしながらも、彼の手をずっと握っていたいと思う。







「ぅ…ん…」


冷たい空気が肌に触れた。いつの間に寝てたんだろう。


ぼんやりとした頭でふと顔を上げると、目の前には彼の顔がある。




これはいつも見る朝の光景…なはずがない。これでもかと言わんばかりに目を見開いてしまう。



「おはよ」


彼はただでさえ至近距離にいるのに、その顔をさらに近付けてきた。


「おはよ」


「…おはよう…ございます…」



ただただびっくりして他の言葉が出ない。何で彼が私の横で寝てるの?ていうかいつの間に私はベッドで寝てたの?


…もしかして私は、彼に何かされた…?いや、これから…?



変なことばっかり考えてしまって、上手く情報処理が出来ない。




彼は顔を離して私の目をじっと見た。



「別にそんなに身構えなくても良いじゃん。手出すわけじゃないんだし」


「そうかもしれないですけど…」


「何、いつ以来なの?男と寝るの」


「っ!関係ないでしょそんなの!」



今聞くべきはそれか!心の中で全力ツッコミをしてしまう。ただでさえ頭がうまく働かないのに、余計に真っ白になってしまう。



「関係あるし。もしかして薫…」



自意識過剰か。そうなのか。

彼と違って私は別にルックスが良いわけじゃないから、谷原さんみたいな物好きがかなり少ない。

だけど、男性経験が少ないのは恥ずべきことじゃないはずだ。自分を大切にしている証!


そう思っているはずなのにやたらとムキになってしまう。



「どっ、どうせ新一さん以外と寝たことなんてないですよ!ごめんなさいね、淋しい女で!」



一人でわめいてる恥ずかしさ、内容のくだらなさに自分でもわけがわからなくなって、とりあえず変になってるだろう私の顔を隠すために寝返りを打った。




彼に何て思われてるんだろう。

そんなことを考えるより早く、彼の手が私の腰を捕らえた。彼の方へ腰からぐっと引き寄せられる。


「ひゃあっ!」


「誘ってんの?」


一気に顔が熱くなるのがわかる。耳元で囁くなんて卑怯だ。


「ち、が…!」


「違うの?そりゃ残念だ」


彼はそう言って私の髪をくしゃくしゃにした。一生懸命髪を直してていると後ろからさり気なく笑い声が聞こえた。





嬉しくて、苦しくて、愛しくて、切ない。これは谷原さんには抱いたことのない感情…。


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