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家に帰ってきてからダイレクトメールの山を漁る。アイツからの招待状はどこだ…。
今となっては雑然としたおっさんの部屋。数年前彼女が綺麗にしてくれていた面影はもうない。
自分で片付けりゃ良い話だが、いまいちやる気にならない。汚い部屋だって生活出来るんだったら問題ないだろう。
そこでふと谷原の顔が出てくる。
清潔感がある見た目。何でもきっちりこなしそうな雰囲気。奴の部屋は綺麗に整理されているに違いない。
そう思うとやけにムカムカしてきて、明日も朝から仕事というのに部屋掃除に取り掛かった。意地でも谷原には負けない。どんな点においても、だ。
そして、あれから数時間が経過した。もともとゴミを放置してたわけじゃないから、処分するものとすればダイレクトメールくらいだったが、物が多くて綺麗に収納出来ない。何回置いていっても彼女がしてくれたような整頓された様子にはならない。
彼女はホントに片付け上手だったんだな…。
いなくなって気付く大切さ、なんてよく聞くが、まさに今そんな感じだ。彼女が当たり前のことのようにしてくれてたことが、俺にはなかなか出来ない。そして、5年経ったいまさら、それを痛感する。
机の上に置いてある一通の招待状。その中には俊哉からの直筆メッセージがあった。
『お久しぶりです!お元気ですか?
奥様と二人で式に来ていただければ嬉しいです。
新一さん、また今度久しぶりに飲みに行きましょう!』
美幸の話を聞く限りでは、奥様とは間違いない、彼女のことだ。
たぶん彼女の話を美幸がしたことがあるのだろう。だとしたら、彼女の事を俺の嫁だと思ってる人達は、俺たちの馴れ初めを知っているはずだ。そして、年齢差も…。
そばにいたい。そばにいてあげたい。
俺はいつの間に彼女に甘えたいと思っていたんだろう?あの頃は甘えさせることしかしてなかったのに。
無意識のうちに手が動く。
何を話そうかなんて考えてもないに、携帯を手に取って電話を掛ける。
相手は言うまでもない、彼女だ。