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『香西さんがね、もし内村さんの申し出た交際を断ったとしても…別にそれは失礼なことじゃない。むしろどっちつかずの態度が人を傷つけることがあるんです。


内村さんにも、彼が敵対視してる人にも、気持ちをはっきり伝えてください。』






確か池田さんはこんなことをいった。



『確か』というのは失礼な話、あんまり覚えてないからだ。

親身になってアドバイスをくれていたのに、私の頭に残ったのは個人情報がだだ漏れしてたことだった。




ちょっとした怒りと恥ずかしさ。それが手伝ってあれだけ連絡を取るのをためらっていた彼相手に、勢いあまって電話を掛けた。



長いコール音の後、電話に出たのは呆けたような彼の声だった。


『もしもし』


「バカー!なに人のプライベート流出させてるんですか!」



どんな理由でなのかはわからないが、彼からの返事はなかった。言い訳をしようとしないのはいさぎいいとは思う。が、今はそんなの関係ない。



「なんか知らないうちに第三者に知られてるし!多分谷原さんのことも喋ったんでしょ!なんかもう…むあー…ばかー…」



谷原さんも全然知らない人からネタにされてるなんて知ったらどう思うだろう。何だか申し訳なさも出て来る。



彼は悪びれる様子もなく苦笑いした。


『バカと言われても』


「むぅ…そうですけど」


『男はみんなバカなの。覚えときな?』


「…そうします」




何なんだ、その理屈。

そう心の中で呟いて黙り込んだ。


すると彼が軽く咳払いをして尋ねてきた。


『それは良いんだけどさ、それ誰から聞いた?』


「どれ?」


『プライベートのくだり』


「あぁ、池田さんです」


『はぁ?何で池田ちゃん?』



数秒開いたのちに彼がそう言った。変な話でもしてしまったのかなと思う。



「うん?今日職場にいらして、夜一緒に飲みに行ったんです」


『はぁ…』



わかったような、わからないような、そんな曖昧な返事を彼はした。





とりあえずその話はここで切り、他愛ない会話をした。そこに谷原さんの名前はもちろん出ない。


仕事のこと、近況、それだけ。



なぜだか私の中で彼の存在が遠く感じた。


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