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何をやってもどこに行っても落ち着かなくなったので、下道を通って帰ることにした。



車内にはまだ演奏会のCDが流れていて、懐かしさと愛しさと寂しさと、いろんなものがいまだに混じりあっている。




…今日も谷原に会うのかな…。






その瞬間、携帯が鳴った。バイブからして電話だったので車を路肩に止めて携帯を手にした。



そこにあるのは『香西薫』の3文字。




先日あんなことがあっただけにどうしたんだろうと思うが、それよりまず胸が詰まって話せるか不安でもある。



「…もしもし」


『バカー!なに人のプライベート流出させてるんですか!』





返す言葉がない。変な意味ではなく、単純に。



心当たりがないことはないが、何の話かがまずわからない。一生懸命頭の中を探してみてもどの辺のことか見当が付かない。



それを知らずに電話の向こうでわあわあと彼女が喋る。



『なんか知らないうちに第三者に知られてるし!多分谷原さんのことも喋ったんでしょ!なんかもう…むあー…ばかー…』




最後の方はどんどん声が小さくなっていった。


もう25になる女性だというのに、どことなくあどけなさが残っている。見た目や立ち振舞いこそそんな感じはしないが、これは俺だけが知っている一面かもしれない。




「バカと言われても」


『むぅ…そうですけど』



軽くため息を吐いた。


「男はみんなバカなの。覚えときな?」


『…そうします』



腑に落ちない感じで彼女が答えた。その様子が何となく見えてきてつい笑ってしまう。





「それは良いんだけどさ、それ誰から聞いた?」


『どれ?』


「プライベートのくだり」


『あぁ、池田さんです』





「はぁ?何で池田ちゃん?」



確かに池田ちゃんには多々相談した。俺の唯一の心当たりは池田ちゃんで、でもどう考えても彼女と接点がないはずだ。




彼女は素っ頓狂な声を出して答えた。


『うん?今日職場にいらして、夜一緒に飲みに行ったんです』


「はぁ…」



何だかよくわからない。どういう流れでそうなったんだろう…。





そこでふと思い出した。池田ちゃんのやたらとにこにこした顔。俺にアドバイスをやるために聞いた彼女の勤務先。



…あのやろう。





どこまで彼女に話したかは知らないが、とりあえずかっこ悪い姿さえさらされてなければ問題はない。


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