表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/237

-173-

結局彼女と連絡取らないまま一週間を過ごした。俺の頭の中には『諦め』の二文字がうっすらと浮かんで来る。



5年近く想い続けて届かないのなら、諦めたほうが潔いだろう。


でも、5年も想い続けたならそう簡単に諦めるのはもったいない、という気もする。



最近浮いたり沈んだりが激しくて、気疲れすることが多い。何事も気の持ちようだとは思うが…良い歳だし、いい加減新しい出会いを求めたって良いか、とも思う。






悲惨といえば悲惨な俺を気遣って、池田ちゃんが飲みに誘ってくれた。一つしか違わないとはいえ、後輩にこんなに気遣われてはなんだか面子が立たない気がするが…そこは仕方ない。



「何か悪いね、いっつも」


「いーえ、私は内村さんが香西さんと幸せになるまで頑張りますから」


そう言って池田ちゃんはカクテルを一口飲んだ。先輩想いな後輩につい笑みがこぼれてしまう。



「で、最近は全然連絡取ってないんですか?」


「まあね…何か怖くてさ」


「谷原さんに取られるのとどっちが怖いですか?」




なんとなく言葉が出て来ない。谷原に取られるのは確かに嫌だ。かといって彼女に直接拒絶されても…と思う。



「…どっちもかな」


「男でしょー、当たって砕けろで良いじゃないですか!」



それが出来るもんなら普通に考えてこんなに苦労しないだろ、と心の中でつっこむ。まあ池田ちゃんなりに俺を一生懸命励まそうとしてくれてるのはすごく伝わってくるから何も言わないが。




「そういえば…香西さんって勤め先プジョーって言ってましたよね」


俺は特に考えることなくグラスをカラン、と回して答えた。


「うん」


「共通の車っていう話題は何かしたんですか?」


「…いや…」


「ならそれをネタに会話すれば良いじゃないですか」




確かにその手はある。でも今の状況でそれをどう利用して良いのかわからない。



「…う、ん。機会があればね」


「頑張れば機会なんていくらでも作れますよ」




やたらとにこにこして池田ちゃんが言った。どこからそんな根拠が出て来るんだ、と聞きたくなったが、どうせ言ったところで『女のカン』と返されるだろう。



「そーですね」


見向きもせずに適当に答えた俺の背中を、池田ちゃんは叱り付けるかのように思いっきり叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ