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携帯を手に取って着信履歴やメールを見たが、彼からの連絡はなかった。





あのあと私が泣いてしまうんじゃないかと心配した谷原さんがそっと抱き締めてくれた。


でも私は、その時初めて谷原さんを拒否した。「大丈夫です、心配かけてすみません」と。



あまりの気まずさに居たたまれなくなって谷原家を出たのはまだ9時前。少し散歩をしてくるから、という理由で一人で外に出歩いた。



10時を回ったところでまた携帯を置いて来たのを思い出し、大人しく谷原さんの元へ戻った。気分が落ち着いたせいか、谷原さんには自然な笑顔を向けれた。


「ご心配おかけしました。今日はちゃんと家に帰ります」






そして家に帰り着き、気付けば朝になっていて今に至る。昨日はトータルで何時間寝たんだろう。



それはとりあえず置いといて、携帯を眺めながら彼のことを考えた。どうして彼は連絡をくれないのか。





その時、ふと数年前のやりとりを思い出す。あれはまだ付き合う前の頃…後で話を聞いたらすでに想い合っていた頃だった。



『女の人は良いよねー…受け身でも彼氏出来るからさ。男って動かないとダメじゃん』


『…そうですか?』


『うん。香西さん絶対受け身タイプでしょ。わかる』




初めてドライブに行った日はどうした?受け身にならないように頑張ったはず。じゃあどうして今は受け身になってるの?



思えば私はいつも受け身だった気がする。私から、なんて皆無に等しい。


ならば今、私から動くしかない。たとえそれが悪い方に転がったとしても…。






ゆっくり呼吸をしながら電話帳を開き、通話ボタンを押す。今日は普通に仕事があるだろうし、大体いつもこの時間に休憩に入ってるはず。


彼がいつ出てくれるのか、それを考えただけで心拍数が上がる。



ぷち、と音がしたのでもしもし、と言おうとした時だった。




『ふざけんな!良い加減にしろよ!』





「えーと…」



心当たりがあるやらないやらで困惑する。彼に怒鳴られたことなんてなかったし、こんなに声を荒げるなんてよっぽどのことがあったに違いない。



「…すみません」



ひとまずここは謝って電話を切った。

思えば5年前、私が彼に捨てられる形で終わったも同然の関係。いまさら私が言い寄ったところで迷惑な話だ。



でも怒鳴られるほどの…何をしただろう。連絡をした事?谷原さんに会ってる事?

何かよくわからない。




はっと気付くと携帯がオルゴールの着メロをずっと鳴らしていた。あの時から設定を変えてないためディスプレイを見なくてもわかる、彼からだった。


恐る恐る手を伸ばして電話を取る。


「…はい」


『もしもし』



耳に懐かしい声が響いた。


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