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検定コースを難無く進んでいく。
「香西さん、道覚えた?」
「っ!私そこまで馬鹿じゃないですよ!」
思いっきり笑う。ここは三國大周辺だ。
「あ、さすがに?」
「一応先輩の家近いですし」
その先輩は男?女?
聞こうとして、やめた。
「それにしてもさ、今お姉ちゃんと二人暮しって言ったっけ?
それ親助かるよねー」
「まぁ家にはお金ないですからね」
「共同生活どう?」
「どうもこうも…」
聞こう、さりげなく。
そう、あくまでもさりげなく。
「二人とも彼氏出来たら大変なんじゃないの?」
よし。
すると意外な返事が帰って来た。
「そう!この前お姉ちゃんに彼氏さんが来るから帰ってこないでって言われて」
「え!?香西さんどうしたの!?」
「行く宛てもなくさまよって…結局学科の子に頼み込んで泊まらせてもらえることになったから良かったものの」
何かすごくホッとした。
つまり、香西さんに彼氏はいない。
「他の家に泊まらなくても良かったのに。
俺だったら平気で帰るよ。『おー、ここは俺の生活場でもあるんだよ!』ってね」
「…お姉ちゃんには言ったんですけどね、宛てないんだから、って。
そしたら『あんた友達いないの?』とか言われちゃって…」
彼女が苦笑いする。なんて天真爛漫なお姉さんなんだ。
「そうじゃねーよ、ってやつだね。
俺も姉貴いるけどさ、またこれが俺を振り回すんだ。良いように使われてるっていうか」
「わかります、それ」
苦労してるんだよ、お互い…
「…二人暮しって事はさ、自炊とかしてんの?」
「そりゃあもちろん。生きていけないですから」
いかにも何でも簡単にこなしそうな彼女だ。料理はきっと上手いに違いない。
「すげー!俺大学の時自炊とかあんまりしてなかったよ…今もだけど」
何気なくフリーな事を示してみる。
…30近くでフリーってどう思われるんだろう。ちょっと不安になる。
「でもちょっと前…こっちに来る前は何も出来なかったんですよ」
何か意外な感じ。何でも出来そうなのに。
「じゃあ掃除とか洗濯とかは?」
「専ら私が。お姉ちゃんしてくれないんですもん。」
…何か心配だ。
「良いように使われてない…?
それ多分香西さんの性格なんだろうね。放っておけないんだろ?」
「よくそう言われます。あんまり自覚はないですけど…おばあちゃん達には『良いお嫁さんになるよ』って言われます」
わかる、わかるよ。
「だって香西さんだったら何でも安心して任せられるもん」