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何となく落ち着かなくなって来た。合コンなんて最近よくやってるのに…。
相手三人が可愛いらしいから?若いらしいから?
いや、さっきから引っ掛かるのは『プジョー』と『フランス勤務』の二つ。
もう会うことはないとわかっていても、彼女の姿が浮かんでしまう。
いい加減振り切らないと一生独身貴族で終わってしまう。もうあれから5年経ったのだ。
「こんばんはー」
その言葉にはっとした。ようやく女の子たちが合流したみたいだ。
一人は満里奈という前見たことがある子。そして残り二人は…
目が合った瞬間に息を呑んだ。何年経っても見間違えるはずがない、彼女だ。
昔と違うのはさらに細身になったのと、髪がセミロングほどになったこと。スレンダーというよりはグラマーな感じになっていた。
…彼女か?
見間違えるはずがないと自負していても、何だか別人に見える。
彼女は少し目を大きく見開いていたが、すぐにあの頃と同じやわらかい笑顔を作って会釈した。
「じゃあまず自己紹介から…原田圭介です。歳は…この前35になったばっかり。恥ずかしいけど…
仕事は証券会社に勤めてます」
「俺は市原誠でっす!歳は秘密。趣味はサーフィンで、仕事はまぁ…派遣を」
この流れで来たら間違いなく最後は俺。適当に座ったはずが真向いにいる彼女にはあまり目を合わさないように喋る。
「えっと、内村新一です。34歳で…えー、自動車学校に勤めてます。趣味はドライブ…かな」
女性陣から拍手が贈られた後、彼女がゆっくりと口を開けた。
「香西薫です。今24歳で、車の会社に勤めてます」
すると誠がこれ見よがしにはいはい!と手を挙げた。
「キミ?プジョーで働いてるの」
「あ、そうです」
「フランスで働いてたんだよね?」
「一年半くらいですけど」
「じゃあさ、」
あまりの彼女への絡み方にイラッとして、つい口を挟んでしまった。
「まだ自己紹介終わってないから後でな」
「あ、じゃあ私が…高島千尋です。今調理師学校でフランス語講師してます」
何故か最後の方は俺を見ながら紹介をした。とにかく彼女達は大学の同期らしい。
「宮地満里奈です!血液型はA型で、好きなタイプは優しい人です!」
この子が圭介目当てなのは見え見えだ。そして誠が彼女狙いなのも…。
ならば俺が守らなきゃ、と思う。
そんな俺の意志に反して俺は席を変えられて千尋という子の前に、そして俺が座っていた席には誠が座って彼女と談笑していた。