表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/237

-146-

夏は嫌いだ。



私にいろんなものを与え、私からいろんなものを奪っていった。


5年経った今でも忘れない、あの夏。





夏休みシーズンの教習所は忙しくて、7月の下旬から休みがなくなった。一応指導員にはちゃんと休暇が与えられてたけど、彼は最近は技能だけじゃなく学科の授業や、検定員の資格の勉強なんかもあってかなり忙しくなった。



家に行っても会話はなく、メールの返信はなくて、電話にも一向に出ない。






こうなることは初めからわかっていた。私はまだ子供で、彼には迷惑しか掛けないから。

まわりから祝福されないことも、彼から捨てられることもわかっていた。



最初からわかっていたこと。だからもう彼を追い掛けたりはしない。



十分に良い夢を見させて貰ったから…。










あれから5年、私は社会人として働いている。

大学専攻のフランス語を生かすつもりが、皮肉にも彼が好きだったプジョーの支社に勤めることになった。


私ももう25になる。四捨五入すれば三十路だ。

昔は「年齢なんて別に…」とか言ってたけど、さすがに子供も旦那も彼氏さえもいなければかなり焦る。




言い寄ってくる人がいなくはない。昔バイトで一緒にお仕事したことがある谷原賢二さん。爽やかなイケメンで、私の5つ上の人。携帯のセールスを仕事にしている。



何ヵ月か前、フランスから帰って来た時に偶然にも谷原さんと再会した。

一年半ぶりの再会に盛り上がってそのまま飲みに行き、それからよく連絡を取るようになった。


ちょうど彼と連絡が取れなくなった時期に初めて谷原さんと仕事をご一緒した。不謹慎ながら彼の笑顔にかなり癒された部分はある。





そんな谷原さんには内緒で合コンに連れて行かれることになった。別に恋人同士じゃないから報告義務はない。でも谷原さんがそれを知ったら悲しむというか拗ねるというか、センチメンタルになるのだ。


まあ数合わせだし良いか、と軽いノリで参加することにした。いかにも「嫌です」って顔したら社会人の名が廃る。そう言い聞かせて合流した。




この先に待っているものが何とも知らずに…。



大学時代の合コン好きの友達に振り回されるハメになった私と千尋は、彼女を横目に顔を見合わせて肩をすくめた。


「ホラー、早く!圭介さんたち待ってるよっ!」


意気込む彼女を見ながらぽつりと呟いた。


「圭介って…満里奈が狙ってる人だったっけ?」


「確か…」




今回はどうやらお膳立てに撤すれば良いみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ