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あれからの俺たちの流れは神様の気まぐれでも何でもない、必然だった。
夏休みシーズンの教習所の多忙さ、彼女のバイトや部活でのスケジュールのタイトさが祟って、一切連絡を取らなくなった。それも、どちらともなく…。
何とか彼女が完治するところまでは見届けたが、それからどうなったのかは知らない。
一度両親に彼女との事を結婚も含めて相談してはみたが、ただ一言、NOだった。
10歳も離れてること、だから子供もあまり期待出来そうにないこと、彼女の就職のこと…
色々反論してみたが、あんなに頑固な両親は初めて見た。姉貴に続いて私大に入ったことも、在学中に車を買うことも許してくれた親がこんなにも反対するなんて…。
そう、これは紛れもない必然。
俺たちはきっと、これから先誰からも祝福されないのだ。きっと、一生。
それは多分彼女も勘づいていたこと。だからお互いに連絡が取れない。
…いや、取らないのだ。
彼女と自然消滅をして5年、俺は相変わらず独り身で頑張っている。もちろん、彼女以来お付き合いした人はいない。
俺はついに次の誕生日で35を迎える。いよいよ婚期を逃して足掻いている状況。後輩の池田ちゃんにはすっかり抜かれ、今や一児の母だ。
世間でいう負け組に入れられてしまったせいか、婚活という名の合コンにもよく連れて行かれる。
一応ウケは良いが、年齢を口にすると結構渋られる。何せ誘ってきた奴がかなりの女好きで、自分の年齢を顧みらずに若い子ばかりを呼ぶからだ。
そして今日も、例の合コンがある。そいつの尻拭いもしなくちゃいけなくていい加減ゴメンなので、今後は参加しないことを条件について行った。
「サンキューな、新一。今日で最後なのは残念だけど…」
「まあ出会いないから仕方ないよね」
「でもさ、今日結構良い子が来るって!何でも車の会社に勤めてるとか…」
車好きの俺には聞き逃せない単語。すごく詳細が気になる。
「どこ?日産?トヨタ?」
「いや、確か…プジョーだった気がする」
「マジで!?」
かなり失礼だが、コイツと知り合いで良かったと今初めて思った。
「若いの?」
「えーと…今24で、入社してすぐフランスの本社に大抜擢されたって。二年経つ前に戻って来たらしいけど」
『フランス』
あの日から一日たりとも忘れたことがない彼女が専攻していたもの。久し振りにそんな単語聞いたな、と思った。
結局、彼女が留学している間を待つ以前に、留学する前に別れたので俺には縁がないものではあるが。
「まあいいや、中で圭介待ってるし入ろうぜ。女の子たちは後で来るって」
いつの間にか巻き添えを食らっている大学時代の友人が待っている席へと足を運んだ。