表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/237

-141-

「お待たせしました」



ドアを開けると優しい笑みを浮かべていた彼女に話し掛けた。この時間をどれだけ待ちわびたことか…。


彼女の手を取って立ち上がらせる。まるでお姫さまをエスコートするかのような動作に、彼女はくすっと笑った。



「お待ちしてました」


「ゴメン、何か色々考え事してたらさ、結構時間かかっちゃって」


「そんなに考え事してたんですか?」


「まぁ…ね」



それが何なのか、言ってしまえば楽になるのに言えるはずもなくて。


俺はひたすら彼女に笑顔を向けた。


「帰ろう」


「はい…あ、私の家覚えてますか?」


「…まあ」




忘れるはずがない。付き合う前に初めてデートした時に寄った場所だ。部屋にはまだ上がった事はないが、写メならちらっと見たことがある。



「申し訳ないんですけど、家まで送ってもらって良いですか?」


「えー、めんどくさ」


「何言ってるんですか、荷物置きに帰らなきゃ」


「俺ん家で良いじゃん」


「部屋も散らかってそうだし…」


「退院早々お姉ちゃんにこき使われるんだ」



彼女は苦笑いを浮かべていた。


「仲良いですって」


「でも『もー、ホラこれ、早くやってよ』みたいに言われるんでしょ?」


「そんな事ないですよ!」



俺たちが通って帰る通路は明るい笑いでいっぱいになった。他からすれば迷惑な話だったのかもしれないが。






車に荷物を積んで出発する。旅行以来のドライブになるため、ガキかとツッコまれそうだがめちゃくちゃわくわくしている。


「よーし、じゃあ発車しまーす」


「はい」


久しぶりに緊張する運転かもしれない。少しでもカッコ良く、スマートに見せなければと思う。

ハンドブレーキをおろして出発をする。すると彼女は窓を開けて外を眺め始めた。



「…目つぶってごらん」


俺の言葉に彼女は何も言わず、笑みを浮かべたまま目をつぶった。


「そんでもって窓から手出して」


横目でその姿を確認する。何をしても可愛く、美しく、優雅に見えてしまう。


「軽く手を握ってごらん」


「…んー…?」


「それ女の人の胸の感触なんだって」



彼女が凄い勢いで俺の方を振り返った。口をぱくぱくさせている彼女がおかしくて、ついつい笑ってしまう。


「ば…っか、変態!」


「でもなんか楽しそうだったじゃん」


「何も知らなかったからです!こんなさせて何がしたいんですか!」


「えー…今ここで言わなきゃダメ?」


「知りません。好きにしてください」


ぷいっと顔を背ける彼女だが、俺としてはいかにもいじって下さい的な感じがする。


またあの楽しい生活が戻って来たのだ。


「じゃあ俺の好きにします。文句はナシよ?」


何もわかってない彼女はうんうん、と頷く。それを確認した上でハンドルを切った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ