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『お父さん、お母さん、春樹へ


入院生活も大分落ち着いて来て、今リハビリに励んでるよ。私の頑張り次第ではもうすぐ退院みたい。

春樹が期末テストで学年一位取ったらしいから、私も負けないように頑張るよ!

また近々連絡するねー


薫より』






実家宛てにようやく手紙を書き終えた。メールで送っても良かったんだけど、手書きの方が何か気持ちが込もってる気がして手紙にした。まだ中学生の弟は携帯持ってないし。

今になって改めて手紙なんて気恥ずかしさがあるけど、それは言わないでおこう。



手紙を封筒に入れて宛先を書き、糊付けして封をした時、先生が部屋にやって来た。


「体調はどうですか?」


「松葉杖なしでも歩けそうな感じです」


「まだ松葉杖使ってもらいますけどね」


先生が強く、でも冗談っぽく言って笑った。


「香西さん、かなり頑張りましたね。明日にでも退院出来ますよ」



今の先生の言葉に一瞬耳を疑った。明日?ホントに?


「…え?」


「今日荷物をまとめさえすれば昼頃にはご自宅に帰れますので」


「ほ…ホントですか…?」


「医者が嘘をついてどうするんですか」


まだ30代であろう先生が優しく微笑んだ。自然と頬がゆるむ。


「ありがとうございます!」


「私は何もしてませんよ、香西さんが頑張ったんです。

『旦那さま』によろしくお伝えください」



そう言って部屋から出た先生は私の顔が真っ赤になったのを知らない。





「はー…」


息を吐き出しながら体をのばす。もうこの病室とさよならかと思うと、寂しくなくはない。


思い返せば怒濤の一ヶ月だった気がする。一ヵ月近く意識がなくて、意識が戻ったら彼とちょっとした事件があって、それから一ヵ月のリハビリ。



そして振り返ってみて気付いた。明日は三ヶ月の記念日だ。もう6月も終わりかと思うと、時間の速さにびっくりしてしまう。




一刻も早く彼に退院を伝えたくて、昼間だから出てくれるだろうかと心配しつつ電話を掛けた。

退院したら何をしてあげよう。今まで心配かけた分、沢山のことをしてあげたい。



コール音はすぐに切れた。


『もしもし』


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