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何なんだろうな、この重苦しさは。
そう思いつつベッドから出る。ここ最近朝一番にするのはため息だ。きっと彼女に言えば『幸せが逃げちゃいますよ』なんて笑われるんだろうが。
最近いろんな人に相談しているのだが、大体『恋愛に年齢なんて関係ない』と言う人もいれば、『女子大生と遊んでないで、真剣に結婚を考えた交際を』と言う人もいる。彼女を遊び相手にしたつもりはない。でも実際そう簡単に結婚、とはいかないのだ。
なんせ初老と言われる歳に達した時、彼女はまだ30歳。他の男に寝取られたって仕方がない。最近不穏な動きがあるみたいだし…。
「内村さん、珍しく車に乗ってる時もだるそうでしたね」
池田ちゃんがコーヒーを持って俺の横に座った。
「あー、考え事」
「彼女さん?」
「まぁ…ね」
ふと冷静になって考えると、池田ちゃんも彼氏持ちの女性だ。色々とアドバイスが貰えるはず…可能性として低い、なんて言ってしまったら殴られそうだが。
「あのさ、例えば結婚相手が10上だとするじゃん。で、マンネリを感じた頃に、上でも下でも良いけどいきなり年齢の近いイケメンにアプローチされたらどうする?」
「…何で?」
「いや…何となく」
「彼女さん浮気してるんですか?」
「してないと思うけどね」
ただ、言い寄って来る男は結構いるみたいだ。中学時代の元カレとか、小学校の時の同級生とか、部活の友達とか。そして彼女がそれに気付いていないのがタチ悪い。
「彼女さんを想うが故なら本人と話すのが一番ですよ。別れた方が良いかも、なんて男側だけが考えてる可能性もありますし」
「そっか」
何となく救われたような気分になる。何かを吐き出すかのようにゆっくりと息を吐き、池田ちゃんの方を向いた。
「もうすぐ退院みたいだし、今度ゆっくり話してみるよ、これからどうするか」
「あんまり重いと嫌になって逃げる女の人もいますからね、気を付けて」
「頑張ってみる」
そしてちょうどその時、彼女から一通の着信があった。思わずふっと笑ってしまう。
「噂をすればなんとやらってやつですか?」
「みたい」
高ぶる気持ちを抑えて電話に出た。
「もしもし」