表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/237

-131-

やっと昼休みに入った。二段階の生徒の指導はある程度楽しいが、正直一段階の生徒は退屈で退屈で仕方ない。





コンビニ弁当をガサッと机の上に置いて一息つく。彼女は今頃何してるんだろう。結局考えることはそこに行き着く。



軽く息を吐いて弁当の蓋に手を掛けた時、池田ちゃんがおもむろに覗き込んで来た。


「あれ、内村さんコンビニ弁当ですか?彼女さんに作ってもらったら良いのに」


「今入院してるって言ったじゃん、この前」


「あ、そうでしたね…」


そう言って池田ちゃんはご飯を一口、口に運んだ。よく見てみれば手にしているのは結構小さな手作りの弁当箱。女性ってこういうの几帳面なんだな、と思う。


「池田ちゃんって彼氏に弁当作ってやってんの?」


「一緒にいれる時は作ってます」


「何か良いね…手作りとかそういうの」


半分なげやり、半分羨ましさが入り混じっている。それをごまかすかのように飯を次々と口に入れた。



「退院したら作ってもらえば良いじゃないですか」


「無理だよ、生活時間帯違うもん」


「…彼女さん何やってる人なんですか?」



しまった。そうだった。

池田ちゃんにまだ彼女の事を詳しく話した事がない。


まあ良いか、と思いつつ、気持ち声を小さめに打ち明けた。


「大学生だよ」




池田ちゃんは俺が予想していた通り、びっくりした顔でこっちを向いた。若干口がぱくぱくしている。


「俺を指名してた生徒だったんだ」


「やっぱりモテモテじゃないですか」


「いや、告ったの俺だよ?」



再び池田ちゃんが勢い良くこっちを向いて目を見開いた。もう良いよ、それ、と言いたくなるようなリアクションについ笑ってしまう。


「なに」


「いや、そうなんだなー、って…」


「そうだよ。誰にも渡したくないって思ったから」


「はー…」


池田ちゃんはそう言って箸を置いた。コレは完全に…質問攻めにあう。



「誰、誰ですか?私知ってます?」


「知ってるんじゃない?セット教習とか応急救護とか、池田ちゃんの担当だったし」


「担当生徒がたくさんいてわからない…」


「じゃあわかんないね」


軽く笑って食後のコーヒーを流し込む。池田ちゃんはちょっと黙った後、意を決したように話し掛けて来た。


「内村さん、彼女さんとの結婚考えてるんですか?」


俺はタバコを吸いに行くために椅子から立ち上がった。池田ちゃんに自慢気な顔を向ける。


「まあね」


池田ちゃんはふっと笑って俺を見た。


「彼女さんが羨ましいですよ、ホントに。こんなにも愛されてるんだから」


「そう伝えとくよ」




そう言って俺は喫煙所へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ