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さっきから顔が熱い。でも扇いで涼もうという気にもならない。
結婚…?彼が…私と?夢を見ている気にしかならない。
思い返せば、自動車学校に通っている頃に片思いした彼と両思いだっただけでも嬉しかったのに、結婚までいくって…話が出来すぎている。
でも看護婦さんは『香西さん以外誰がいるんですか?』と言っていた。ということは、彼が結婚を意識しているのは…
「薫?どうしたの?」
ドキッとした。いつの間に病室に入ってきたんだろう。私の考えなんか見透かされてそうで正直怖い。
すると何を思ったのか、彼が私の頬に手を添えて、彼の方へと顔を向けさせた。彼は少しびっくりしたように尋ねる。
「何、どうしたの…」
「べ、つに…何も…」
顔を反らすしかない。今はただただ、彼と顔を合わせるのが恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「薫…?何かあったの?」
心配そうに尋ねてくる彼に、今私がどんなことを考えているのか伝えたい。でもそうするにはあまりに恥ずかしすぎて。
「…あの!け、『ケッコン』って美味しいんですか?」
「…は?」
ごもっともな反応だ。何を言ってるんだろう、私…。
それでも脳内がパニック状態を引き起こし、まともなことが考えられない。
「か、看護婦さんが…新一さんが『ケッコン』をかなり意識してるって、言ってたから…」
その言葉を聞いた彼は、ふっと笑って私の手にそっと大きな彼の手を添えた。
「結婚って人それぞれと思うけどね…ただ俺のに関しては激甘にするつもりだけど」
何だそれ。思わず赤面してしまう。彼のに関してだから私のとは限らないのに、何故だか気持ちが高揚する。
ゆっくりと、ゆっくりと、彼の顔が近づいて来ているのがわかる。私も俯かせていた顔を少しずつ上にあげた。
そして唇が重なった。私の全てを包み込んでくれるような優しさにすがりたくなるし、甘えたくもなる。
彼はそれを受け入れるように、再び深い深い口付けをした。
唇が離れた時、彼がそっと私の頬を撫でた。
「早く怪我治してドライブに行こうよ」
「頑張ります」
「無理したらお仕置きだからね」
「な、何でですか!」
「何ででも」
彼との時間が永遠のものであれば良いのに…。