表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/237

-112-

まどろみの中目が覚めた。天井をふと見上げ、ぼんやりと騒ぎ立てる周りを見た。


両親が泣いている。友達が手を握っている。奏が安堵の表情を浮かべている。





生きてたんだ、と思う。




数日前に交通事故に遭った。原因は飲酒運転と信号無視。私が通りかかった時、小さな子供がひかれそうになっていた。


助けなきゃ。乱暴ながら子供を突き飛ばし、それからの記憶がない。



「薫…!心配したのよ!」


お母さんが涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑顔を作った。お父さんはそんなお母さんの肩を抱いている。


「良かったよ…もう起きてくれないのかと思った」


手を握ってくれていた美樹ちゃんがさらに力を込めて手を握った。私の腕に美樹ちゃんの涙がつたってくる。


奏は何も言わずに笑顔だけを向けてきた。




そこに、彼の姿はない。






あとで聞かされて知ったことだけど、今日は事故からちょうど三週間らしく、私は二週間近く意識不明の状態だったらしい。


彼が来てくれると言ったコンサートも、結局出ることもなく五月に入ってしまった。



ひどく落ち込む私の病室にノックの音が響いた。


「薫っち!具合どう?」



ひょっこり顔を出してくれたのは、OGのゆかりさんだった。四年生だけど、実は留年。一応前期卒業の見込みはあるらしい。


「ゆかりさん…!」


「意識戻って良かったよ。ハイ、これ。食べれるかわかんないけど…もし食べれそうなら食べて」


「ありがとうございます」


ゆかりさんの作るお菓子は市販のかと思うくらい美味しい。ゆかりさんは私のためにこんなにたくさん作ってくれたらしく、すごく嬉しい。



さっそくその内の一つを口にしたとき、ゆかりさんが嬉しそうに話し掛けてきた。


「最近良い人見つけたんだ!すっごいかっこよくてさ!

彼女いるらしいんだけど、最近微妙みたい。だから頑張ってみようと思って」



こんなに良い人が好きになる人だ、相手の人も素敵な人に違いない。


「応援してます!うまくいったら教えて下さいね」





歯車は、止まる事なく動いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ