表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/237

-104-

「何、どうしたの?」


『いや、何となく…元気かなって』




困る、今電話されてもかなり困る。かといって折角かけてくれた電話をないがしろには出来ないし、でもだからと言って彼を放置したままには出来ない。



『今何してんの?』


「えっと、今旅行中」


『へー…誰と?』




『彼氏と』


そう言えば済むものを、何故か口から出てこない。彼との関係に後ろめたさなんて何一つないはずなのに。





私は一体どうしたら良いんだろう。そう思った矢先、彼が私の手から携帯を奪い取った。今までに見たことのない剣幕に、怖ささえも感じる。



「悪いけど、今お取り込み中だから」



彼は担任と会ったときよりも刺のある口調で喋った。するとそのまま電話を切ってしまった。びっくりしていた私はそれを見てはっとする。


「なっ、何するんですか!せっかく話してたっていうのに」



彼の手から携帯を取って反論した。と言っても実際は助かった、という気持ちでいっぱいだった。



「だって何か困った顔してたし」


やっぱり彼は察してくれていたんだ。ただ、あの言葉が出てこなかった事に罪悪感を覚える。


「ねぇ、この人誰?」



追い打ちをかけるかのように彼が尋ねて来た。元彼との関係はもうとっくに終わっている。なのに何で?『彼氏と旅行に来てる』と言えなかった。





彼は私の全てを察してくれたのか、そっと頭を撫でてくれた。


「ゴメン、嫉妬」



胸が痛くなるのがわかる。私は嫉妬してもらえるほど彼に愛されているんだ。震える手で彼の袖を掴んだ。


「…元彼です、中学の時の」




誤解されたくない、だからこそ素直に言うしかない。

彼は少し険しい顔をしたが、すぐにふっと笑った。


「そっか」


「怒ったりしないんですか?」



うっすら涙を浮かべた目で彼を見た。彼は優しい笑顔のまま私の頬をさすった。


「別に…浮気じゃあるまいし、友達と電話くらい…ね?」



私の頬に彼の唇が落ちて来る。じんわりと心が温かくなり、自然と頬がゆるむ。


「せっかくの旅行なんだからさ、楽しもうよ。今日明日で終わっちゃうし」


「…そうですね」



そう言って二人で星空を眺めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ