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車に揺られて約四時間、やっと旅館まで帰って来た。


行きがけに運転していたけど、途中でカーナビがついてないことに気付いて少々パニック。きっと彼が運転交代してくれてなかったら、軽く難民みたいになっていたところだった。


たまに彼からアクセル踏んで、とか早く右折してよ、とか言われたけど…まあよし。




それは置いといて、行きにある程度運転させておいていきなり爆笑し、『いや、やっぱり俺が運転するよ』と言ってカーナビを起動させたのは正直ずるい。



「はー…それにしてもカーナビないとあんなに苦労するんだね」


彼が車から降りながら喋った。


「何でカーナビ消したんですか!訳わかんないことになっちゃったじゃないですか」


自分だけ文明の利器使ってくれちゃって…。

そんな私をよそに、彼は笑いながら車の鍵をかけた。


「まぁでもカーナビあったって薫使いこなせないでしょ?あってもなくても一緒」


「むぅ…」



確かにカーナビあったってよくわかんないし、彼も実際何度もカーナビを無視していた。でもここで負けたくない。



「そんなことないです、私カーナビ使えますもん」


「え?ここ来るとき理解してなかったじゃん。

地図が読めない薫さまはカーナビも使えないでしょ」


私の無駄な意地っ張りは見事に砕け散った。


「…ドS」


「だぁって薫ドMなんだもん」



何が、どこが。いつも訊くけど明確な返事は返って来ない。

彼は私が次に口にしようとしている言葉がわかっているからか、耳元に口を近付けてきた。いきなりの事にびっくりしてびくっとしてしまう。




「アレはドM以外のなにものでもない反応だったけど」


そうささやいて彼が離れた。アレって…アレ以外に何もない。余裕の笑みを浮かべている彼とは対照的に、私は顔を真っ赤にした。



「バカ!変態!」






部屋に帰ってもあえて彼と口をきかないことにした。彼がどんな反応をしてくれるのか楽しみだし、お詫びに何かしてくれるかもしれない。


ちらっと彼の様子をうかがうと、彼が視界から消えていた。



あ、れ…?




その時だった。


「ひぁ!」


びっくりした。気付けば彼は私の真後ろにいて、腰に腕を回している。彼の腕から逃れようとするものの、左手首を捕まれているためうまく動けない。



「ねぇ薫、何で無視するの」


「何でって…自分の胸に訊いてくださいよ」


彼はふっと笑って私をつかんでいる手の力を緩めた。


「わかんないなぁ」




逃げれる。そう思った矢先、目の前には彼の顔しかなかった。抵抗しても抵抗しても、それは無駄なことだってわかっている。



「可愛い」



彼がそう言って私を抱え上げた。さすがにもう次に何が起こるかわかる。


「ちょ…っ、と…!」



彼は何も言わず、ただ笑みを浮かべて私をそっと布団の上に降ろした。彼の手が伸びてきたその時、




私の携帯が鳴った。助かった、と思いながら携帯を手に取る。年齢的にもきちんと分別がある彼は、残念そうにしているものの、その場に座って待機している。



名前も確認せずに電話をとった。


『…薫?俺だけど』




何で?この前話したばっかりだし、もう話すことなんてない


「…奏…?」





元彼が電話の向こうで急にごめんね、と言った。


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