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変人探偵 国崎

茶番劇場

作者: 今日の空

初めまして。今日の空です

文章力皆無ですがお付き合い下さい。

あくまで茶番。茶番ですよ。

茶番劇場の始まり、始まりー

聖なる夜に、悲鳴が上がった。




昨夜、大きなお屋敷には大旦那主催のパーティーで大勢の人が集まった。そして、その日はパーティーが長引き、遠くから来た人はお屋敷に泊まっていた。


「なぜホールに人を集めたんですか?」

「実は昨夜、とても悲しい事件がありました」

喋りだしたのは、いかにも「探偵をしています」とでも言いそうな服装の若い男だ。大旦那はとても複雑そうな顔をしている。何やら深刻な事態になっていることは伝わった。

「みなさんお静かに」

良く通る男の声がざわめく人々を静める。

「あなたは一体…」

「私は探偵です」

男は名乗らない。

「で、事件ってなんだよ。まさか、殺人事件とか言うなよ」

「いいえ。ある意味もっと残酷な事件です」

人々がどよめき、大旦那がさらに複雑そうな顔になった。


「昨夜、私のケーキが食べられました」


「…は?」


一同の声が揃い、

「…この、甘党が…」

大旦那の呆れたような怒ったような声がぼそっと聞こえた。




探偵は指パッチンをしながら助手を呼び出した。

「今から一人一人、事情聴取をします」

さっとメモを取り出した助手は、柴犬のように目をくりっとさせる。

「大旦那様も合わせて、全員で11人ですね」

「下らねぇ。俺は部屋に帰るぞ!」

早々に死亡フラグを立てて去ろうとするのは旭川だ。

「旭川君」

旭川を止めたのは探偵、ではなく大旦那だった。予想外の人物に止められ一同がざわめく。

「殺人事件を起こしたくなければ、言う通りにしてくれ」

仮にも企業のトップの大旦那。メンタルは人一倍強いはずだと言うのに、今は夫婦喧嘩に負けた旦那のようだ。

「…しかし、大旦那」

「頼む! ヤツの甘党を甘く見ないでくれ」

「…わかりました」

腑に落ちない顔だが、旭川が了承した事により場の空気が落ち着いた。

「さて、旭川さん。あなたから話を伺います」




「あなたは10時から10時半の間、何をしていましたか?」

「パソコンでゲームしてましたよ。履歴調べりゃ出てきますよ」

「持ち運び可能なノートパソコンですか?」

「いや。大旦那が好きに使っていいとおっしゃったから、部屋にあったパソコンですよ」

「そうですか。ひとまず、旭川さんの事情聴取は終了です。ご協力ありがとうございます」

「あっさりしてますね」

「先生には充分なんですよ」

助手は憧れの眼差しを探偵に向けた。

「次は、伊勢さん」




「はぁ。なんか、大変そうですね」

若い女性は眠そうな目をしていた。

「あー、昨日はねー、星見酒してましたよ」

「お一人で?」

「ううん。宇治さんと、菅野さん。そうですよねー。あ、身内はアリバイ証明にならないんですよね?」

「まあ、正式な捜査の場合はそうですね」

「今回の場合は?」

「大丈夫です。アリバイ証明というか、先生は嘘を見抜く事が得意ですから」

「はぁ。頭いいんですね」

「はい。質問は以上です。伊勢さんありがとうございます」

「いいえ」

伊勢はふらふらと立ち上がった。

「次は、宇治さん」




「僕は食べてないですよ。ケーキ嫌いなんです。というか、甘ったるいものが嫌いなんです」

「そうなんですね」

「あと、気になったんですが。その10時から10時半という時間は、どのようにして判ったのですか?」

「あぁ。それはですね、ケーキを写真に撮ったカメラの時間が十時でした」

「その直後にあなた方どちらかが食べた可能性は?」

「それはないですね。写真を撮った後冷蔵庫にケーキを入れ、二人でコンビニへ行きました。車で行ったので時間はそうかかりませんでした。コンビニの店員や、防犯カメラにアリバイがあります」

「帰ってきてから食べた可能性は?」

「それもないです。僕が冷蔵庫を開けましたし、先生もその場にいました」

「二人がグルなら?」

「騒ぎ立てるメリットがありません」

「成る程。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ、ありがとうございます宇治さん」

宇治は少し笑って立ち上がった。

「次は、遠藤さん」




「ワシは寝ていたよ。この歳になると夜更しがキツくてのう」

「随分と早寝ですね」

「そうかい? 徳子が、あ、いや、ワシの妻は9時には寝てしまうから」

「健康的で素敵じゃないですか」

「あと、甘いものを食べると胃にくるからのう。あと、血糖値」

「それは大変ですね」

何やら長い話になりそうな予感がしたところで探偵がストップをかけた。

「そろそろその辺で」

「あ、はい! では、遠藤さん。ありがとうございます」

「頑張れ若いの」

遠藤はどっこいせと腰を上げた。

「次は、大旦那様」




「食べてない。というか、お前のケーキを食べるほど愚かでも命知らずでもない」

「コイツは違うぞ。コイツは私を目の前にして嘘をつけないからな」

震える大旦那を見て、「何があったのか」と聞ける勇者とバカはこの場にいなかった。

「…えぇっと、次は、菅野さん」




「…顔に付いているのはなんですか?」

「生クリームです」

「はい。見ればわかります」

キリッとした顔の女性は堂々と答えた。

「シュークリームを作っていました」

「女子力高いですね」

「疑わないんですか?」

「そこは先生の領域です。私の仕事はあくまで助手ですから」

「健気ですね。よく柴犬に似ているとか言われませんか?」

「え、よくわかりましたね」

「見たままの感想です」

「そ、そうですか。あ、質問は以上です。ありがとうございます菅野さん」

菅野はスッと立ち去った。

「次は、木内さん」




「食べてないですよ。苦手なんですよねー。チョコとか、あと、ナッツ類とか」

「そうなんですね」

「なんか、クドイじゃないですか。最初の一口二口はともかく」

「そうですね」

「しかも、今回はケーキでしたっけ?」

「はい」

「そんな量食べたら気持ち悪くなりますって」

「苦手な方はそうですね」

「ちなみに、昨日は友達と電話してましたよ。ほら、これ記録です」

「ありがとうございます木内さん。質問は以上です」

木内はさっさと立ち去った。

「次は、剣持さん」




「そのケーキって小麦粉と牛乳使われていましたか?」

「はい」

「では、無理ですね私には」

剣持は顎髭を撫でながら言った。

「なぜですか?」

「アレルギーなんですよ。特に小麦粉が駄目ですね。一度死にかけたことがありました」

「ああ。成る程」

「あ、私で最後ですね」

「はい。剣持さんありがとうございます」

「いいえ。探偵さん、犯人はわかりましたか?」

質問の間ほとんど口を開かなかった探偵は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「えぇ、勿論」




「もう一度皆さんにお集まりいただいたのは、犯人が判ったからです」

ざわめく人々に、青い顔をした大旦那。

「犯人は、あなたです」

スッとある人の前に膝をついて手を差し伸べる。

「木内さん」

「な、なんで!?」

「あなたはこういった」

「苦手なんですよねー。チョコとか、あと、ナッツ類とか」

助手の声真似に数名吹き出す。

「そんな量食べたら気持ち悪くなりますって」

「なぜ、チョコレートだと言ったのですか? なぜ、気持ち悪くなる大きさだど言ったのですか?」

「そ、それは…」

「携帯に確かに通話履歴はありました。ですが、携帯は持ち歩く事ができますよ」

「…わ、わかった。もういいから。認めます。ケーキを食べたのは私です! すみませんでした」




「お前、なぜ彼女に罰を与えなかった?」

大旦那がふと聞いた。

「どういう意味かね?」

「甘党狂いのお前なら、何かするだろうと思ってな。まさか、木内君が可愛かったから見逃したなんて抜かすんじゃないだろうな?」

「私がその理由で見逃すのは純香だけだ」

「そうか。要らんこと聞いた」

「それに勘違いするな。私は確かに甘党だが、それ以上に推理が好きだ。よって、推理の機会を与えてくれた彼女に、クリスマスプレゼントを与えただけだ」

「…そうか。相変わらずハチャメチャで理解出来ん」

「そうかい?」

「そんなお前に一つプレゼントをやろう」


「あの場には私や、お前達を含めても10人しかいなかったぞ。はたして君の優秀な助手のカウントミスかな?」

「ははっ! 簡単さ。私が国崎、助手が小日向」

「なんの話だ?」

「お前は大武。五十音順に並べると、

旭川、伊勢、宇治、遠藤、大武、菅野、木内、国崎、剣持、小日向…。ときたら次は、サンタだろう?」

「正気か?」

「いつだって正気さ」

最後までお付き合いいただき

ありがとうございました。

漢字では「有り難うございました」と書きます。

「有る」のが、「難しい」

だから最大の感謝を表す。深い言葉ですよね

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