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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第93話「能力不明」


「……はい?」


 倉崎君の発言に対し、咄嗟に出た言葉がそれだった。

 周りのみんなも同じような反応だったようで唖然した様子だった。


「あんたもしかして適当に言ってる?」


 ちょっとキレ気味になりつつある夏妃ちゃんがそう発言する。


「そうじゃない。今回ばかりはオレも分かってないんだよ」

「はぁ……なんか馬鹿馬鹿しくなってきたわ」

「夏妃ちゃん、一旦落ち着こう? それと倉崎君、色々と説明してもらっていいかな? 私たちはそもそも何も知らないわけだし」

「……悪かった」


 一言謝罪を入れた倉崎君は再度話し始める。


「オレの能力についてはさっき言ったように色がモヤのように見えるとは話したな?」

「うん」

「そのモヤには色がついていることが普通なんだが、金森の場合は色が存在していない。そうだな……例えるならオレが今まで見てきたものが色付きの煙のようなものだとすれば、金森から見えるのは陽炎のような状態ってことだ」

「……陽炎って何?」

「夏場とかによく見る遠くにあるものが揺れたり歪んだりして見える現象のことだね」


 姫城君に説明してもらってなんとなくその光景が分かった気がする。


「でもそれって能力がないってことにはならないの?」

「現状見た限りでは金森以外に同じ状態が見られないからな」

「それにさっきの発言からして倉崎が見た無色のモヤは未知の能力ってことになるな」

「ああ、その通りだ」


 未知の能力……それがどう言うものか見当もつかないけれど、少なくとも私の能力が人を傷つける能力じゃなければいいなと思う。


「それともう一つ疑問がある」

「もう一つ?」

「この前……確か彩咲先生が屋上にいってた時だったか、金森を見かけたんだが」


 屋上……それってもしかして私が姫城君に想いを伝えた日のこと!?

 内容によってはめちゃくちゃ言いにくいんだけど!?


「あの時の金森はどす黒いモヤがあったんだ」

「……え?」


 想像していた内容とは違うけれど、その発言も無視できないものだった。


「ちょっと待って! それじゃあさっきまで倉崎君が言っていたことと矛盾してない?」

「ああ、そしてあくまでオレの想像になるんだがこんな仮説が出てきた」


 黙って倉崎君の次の言葉を待つ。

 少しの沈黙の中、倉崎君は再び口を開いた。


「金森のそばにはずっと佐野梓がいたんじゃないか?」


 再度訪れる沈黙。

 でも、なんとなく私にはわかるような気がした。


「そっか……」


 ふとそう口に出していた。


「そうだったんだね……」


 言葉と共に涙が溢れる。

 そして少しだけ思い出すことができた。


 梓ちゃんは私の初めての友達だ。


 まだ他のことは思い出せない。

 そしてこの記憶もまた忘れてしまうかもしれない。

 周りでは心配そうに私に声をかけてくれるみんながいる。

 私は制服の裾で涙を拭い、落ち着きを取り戻す。


「少しだけ思い出したよ。梓ちゃんは大事な友達だから」


 私は決意した。


「絶対に梓ちゃんを連れ戻したい」


 そう言葉にして意思表明するのだった。


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