第91話「認識できない理由」
みなちゃんの発言に対し、私たちは何も言えずにいた。
「なるほど、合点がいった」
静まり返るその沈黙を破ったのは、倉崎君だった。
「……私もなんとなく分かったわ」
「え? 夏妃ちゃんも?」
どうしよう……私は全然わからない。
「あ、有馬さん。どう言うことか教えてもらって良いかな」
千奈ちゃんにそう言われ、夏妃ちゃんは顎に右手の曲げた人差し指を当てながら少ししてから話し始めた。
「そうね……まず、佐野梓の『盲点』で私たちの佐野梓に対しての認識は無くなるわけよね?」
「うん」
「そして桜田の……能力名を仮に『能力耐性』とするけれど、佐野梓の生まれつきであれば、彼女はずっと1人きりだったはず」
言われてみればそうだ。
でもそうならなかったのは……
「でも、桜田君が側にいたってこと?」
「ええ。その前に聞きたいのだけど、桜田の『能力耐性』は周りにも影響するとわたしは考えてるのだけどどうかしら?」
問いかけは桜田君とみなちゃんに向けられているようだ。
「ああ、私もその認識で問題ないと思ってる」
「なんでそんなことがわかるの?」
私は疑問に思ったことをそのまま口にしていた。
「それはだな……実は桜田の能力が判明した時点でいくつか調べた結果なんだ」
みなちゃんの話によると、桜田君の能力を調べるために幾つかの能力を桜田君にぶつけたようだった。
そして影響が少ない能力も同時に私たちにぶつけていたとみなちゃんは言っていた。
「みなちゃん……そんなことしてたんだ」
「……いや、私も流石に悪いと思っているが、それも私が調べておかないといけないことの一つだったんだ」
そう言われてしまうと私は何もいえず、その話を聞いた夏妃ちゃんが再度話し始める。
「それなら私の仮説の一つは辻褄が合うわ。先ほどの話の続きになるけど、一人きりだった彼女のそばに桜田がいたことで周りに自身が認知され、問題なく日常を送れていたはずよ」
「だったら……」
梓ちゃんが今こうしていない状況がおかしい。
そう言おうとした私の言葉を遮るように夏妃ちゃんは続けた。
「ここからは憶測も入るのだけれど、一人きりだった彼女のそばに桜田がいたことで、彼女はこう思ったんじゃないかしら。自分のせいでこの人に迷惑をかけてはいけないって」
「そんなこと……」
ない、とは言えない。
私が同じ立場だったら、私だってそう思うはずだ。
そして夏妃ちゃんがこの考えに至ったのはおそらく私との出来事があったからだと思う。
前の夏妃ちゃんだったらきっとこんな考え方はできなかったと思う。
「だからこそ、佐野梓は自らの能力を使わないように制御していた。そしてそれが抑えられなくなり、ついには爆発して自身でも制御不能になった。と言うのが私の考えよ」
この短時間でそこまで考えられるなんて、夏妃ちゃんはやっぱりすごいと感じた。
「オレも同じ考えだ。むしろオレ以外にそこまでの答えを出せる奴がいたことに驚きだ」
「……そう」
倉崎君の賞賛にツンとした態度をとっていた。
きっと夏妃ちゃんはまだ倉崎君を信用していないのだろうと言うことが察せた。




