第90話「能力による疑問」
「まずはそうだな……さっき話にも上がってたあんたからだ」
倉崎君はそう言って桜田君を指差す。
「あんた……桜田だったか」
「ああ」
「桜田の『力』は恐らく他の『力』を受けづらい事だと思う」
「……なるほどな」
桜田君は何か察したようだけれど、私は全然分かっていなかった。
「え、えっと、つまりどう言う事?」
「つまり、今回梓の影響をうけなかったのが俺の能力だったってことだ」
「そうだな。桜田の能力は他の能力に干渉しない能力……ゲームで例えると状態異常になりにくい能力とでもいえばわかりやすいか」
みなちゃんの説明でなんとなく理解ができた。
しかし、それによってまた別の疑問が浮かび上がってくる。
「あれ? それじゃあなんでみなちゃんは梓ちゃん? のことを覚えていられるの?」
「綾乃ちゃんの言うことも気になるけど、そもそも佐野梓ちゃんにも能力があるって事ですよね?」
私の疑問を発したあと、それに合わせるように千奈ちゃんが更なる疑問を問いかけていた。
「そういえば佐野の能力について話していなかったな」
「先生、佐野梓の件についてはオレはほとんど知りませんよ」
「そりゃあお前にはほとんど面識もないし、話してもいなかったからな。それで話に戻るが、佐野の能力は恐らく『盲点』だ」
みなちゃんから告げられた梓ちゃんの能力。
いまいちピンと来なかった。
「盲点って、見過ごしとか見逃しとかそう言う意味合いですよね?」
姫城君が率直に言葉の意味を確認する。
「ああ。人である限り、気づけるはずのことが気づけなかったと言うことは起こり得る現象だ。しかし、佐野の能力は意図的にそれを作り出すことができるんだ。しかもそれは人の目によるん認識だけではなく、記憶能力にも作用してるようだ。お前らが佐野についての記憶がほとんど覚えていないのはこの能力によってその記憶に気づけず、思い出すことができないのが原因だろう」
盲点を作り出す。
そんなことができるものなのだろうか。
しかし、現に私たちはそれを受け、実際認識することができていない。
「ちょっと待ってください、俺たちは前までその子を認識できていたはずですよね? それじゃあなんで急に認識できなくなったんですか!? もし能力が発動していたなら最初から出会っていないはずじゃ……」
出会っていないと言う表現は多分違うと思うけれど、姫城君の言いたいことはなんとなくわかる気がする。
最初から盲点が発動していたなら、私たちはそもそも梓ちゃんに気づかないはずだ。
だからこそ、私の心がこんなにもざわつくのは……。
「それはきっと……俺のせいだ」
混乱している私たちに対してそう言ったのは桜田君だった。
「梓の能力に干渉しない俺の能力があったから……」
「そんなこと……」
「いや、ある意味でそれは正しいかもしれない」
否定しようとした姫城君を遮るようにみなちゃんはそう言い放っていた。




