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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第89話「能力」


 その場にいた全員が言葉を失う。

 それは空想上の設定として扱われることがある、それぐらいの認識の代物。

 だからこそこうして実際にその空想上でしかあり得ないものを目の当たりにして動揺を隠すのは正直かなり難しいと思う。

 しかし、この場には例外が存在していた。


「……なるほど、初めてみたがこれが先生の『力』か」


 冷静な口ぶりで倉崎君がそう呟く。


「く、倉崎君は驚いてないの?」

「少しは驚いたが、最初に説明しただろ? オレは『色』を認識できる。だから大体彩咲先生の『力』については察しがついてたんだよ」


 確かにそう言う世界を見てきた倉崎君は私達に比べて珍しいことではないのかもしれない。


「……倉崎は当然として、そう言う反応になるのは無理もないな」


 みなちゃんの黒鉄の刀身と化していた腕は徐々に人の、見慣れた腕の姿に戻っていく。


「しかし、これで納得できたはずだ。私のはかなり特殊な例だが、私や倉崎のように能力を持って生まれた、もしくは突然顕現したといった能力持ちが存在することを」


 確かにみなちゃんのあの姿をみて能力というものが存在することは認めざるを得ない。

 しかし、少し気になる点もある。


「でも、仮に能力があるってことは何かしら自覚しているものじゃないの? 倉崎君の場合は『色』が見えるし、みなちゃんだって腕が変化するし……」

「それがそうでも無いんだ。『力』をもった人間というのは必ずしも自覚できるものばかりではなく、例えば運動能力を向上させるといった能力を持ってるとしたら、それを無自覚に使って自分は運動神経が良いとか他の人からは運動神経がいい人という認識をされるはずだ。その場合自分はただの運動神経が良いものと解釈して能力だとは思わず一生を終えるなんてことがあり得る」

「……つまり、自身が能力者であることに気づく事がない可能性があるってことですか?」

「そうだな。倉崎の場合ははっきりと他人と違う見え方をしていることと、単純に頭の回転がいいから気づいたんだろう」


 何となくだけど私の頭でも理解できた気がする。

 そしてこのあとの展開も大体察しがついてきた。


「倉崎君はもう見えてるんだよね? 私たちの『色』について」

「ああ、ここに入って来た時からな」


 それにみなちゃんの口ぶりからして、桜田君には能力があることは確定している。


「前置きが長くなってしまったが、本題に移ろう。倉崎、頼めるか?」

「分かってる。ただ、一つだけ不可解なことがあるがな」

「不可解?」

「とりあえずはそれは後回しだ。とりあえず分かってる状況から説明していく」


 倉崎君が私たちを見て分かった能力について説明してくれるのだった。


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