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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第87話「揺さぶられる心」


 ……佐野梓。

 その名前に対し、私は初めて聞いたはずだ。

 そのはずなんだけれど……。


「その名前、覚えてるんですか!?」


 私を含め、全員がその名前についてピンときていない中、桜田君だけがとても動揺していた。


「逆に桜田、お前は覚えてるのか?」

「そんなの当たり前だ……でも、梓は消えちまうし、みんなはまるで梓が最初からいなかったかのような振る舞いをするし……」


 桜田君の言葉に他のみんなはピンときていないようだけれど、私には他人事には思えない。

 それどころかとても心が揺さぶられる。

 謎の違和感。

 今の私にはその少女との記憶はないはずだけれど、考えようとするとシルエットとして浮かび上がりそして消えていく感覚。


「……そうか。桜田のその観点を踏まえて集まってもらった二つ目の理由についてだが」


 理解が追いつかないまま次の理由について説明される。


「お前らが持っている固有の『力』についてだ」


 ……さらに理解が追いつかない話が繰り出されていた。


「先生、そりゃあ直球で『力』なんて言われてもそりゃこう言う反応になると思うが」

「まず順を追って話をしよう。わかりやすい例えで言うならそうだな……ゲームとか漫画でよく見る魔法や超能力と言ったイメージだろうか」

「いや……そう言われても全然わかんないけど」


 いきなり魔法や超能力を持っていると言われてもどんな反応をすれば良いかわからないし、第一その自覚すら私たちにはないはずだ。

 ……いや、一つだけある。


「……そっか、桜田君がその超能力? の持ち主ってこと?」

「珍しく察しが良いじゃないか」

「その言い方はひどいと思うんだけど!?」


 確かに普段の私であれば全然考えつかないけれど。


「金森さんの言うことが正しいなら倉崎君がここにいるのも偶然じゃないはずだ」

「もちろんその通りだ。こいつは『力』を持ってるからな」


 倉崎君の『力』についてみなちゃんから説明を受ける。

 聞いた話をかいつまんで言うと倉崎君の目は他人から発するモヤのような『色』を認識できて、その色によってどんな『力』かがわかると言うことらしい。


「……そう言われてもなぁ」


 正直みんなピンと来るはずもなく、何なら倉崎君の妄想である可能性も捨てきれない。


「口で説明するより、実際に見てもらった方が分かりやすいな」


 みなちゃんが私たちが信用しきってないことを見てそう提案する。


「見るって何を?」

「もちろん私の『力』についてだ。今更だが私はこれを能力と呼ぶことが多い。ちなみにすこしグロいかもしれないからそう言うの苦手なやつは後ろ向いておけ」


 周りを見渡すが、誰も後ろを向いていないようだった。

 きっと怖いもの見たさみたいなものが優っているのだろう。

 少しして、みなちゃんは右手を前に突き出す。

 その右手の先からが徐々に黒鉄の刀身のように変化していった。


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