第86話「呼び出しの理由」
「うわぁ! びっくりした!」
部室に人がいたことを認識した私は咄嗟に驚きの言葉を発していた。
「びっくりしたのはこっちの方なんだが」
男子生徒が言うように本当に驚いているか疑問になるくらいの冷静さで発言する。
「確か君は……」
「姫城君、この人の事知ってるの?」
「あんまり詳しくはないけど、確か同じ学年の生徒だったはず」
「というか、倉崎君じゃない?」
せんちゃんが考え込む姫城君の横でそう発言する。
「せんちゃん、知ってるの?」
「うん。だって今同じクラスだし」
なるほど、それなら知っているのも納得だ。
「ところで私達、みなちゃんにここに来るように言われてきたんだけど……」
「みなちゃん? ……あぁ、彩咲先生のことか」
「うん。それでみなちゃんから何か聞いてるかな?」
「いや、何も」
みなちゃん……なんでもともと居た人にだけ連絡してないの……。
「まあいい。とりあえず適当に座ってくれ。適当に茶でも入れる」
読んでいた本を閉じ、立ち上がる倉崎君。
「あ、わたし手伝うよ」
「別にいい。前に彩咲先生から客がきた時には茶ぐらい出しとけって言われてるだけだからな」
備え付けられている冷蔵庫の中からすでに作成されている麦茶のボトルを取り出し、棚に並べられた湯呑みを洗い流して麦茶を入れていく。
私たちはその光景を見つつも倉崎君の言う通り部室内の開いている席へと足を運ぶ。
部室はなかなか広く、私たち7人が入っても窮屈に感じないほどでおそらく備品を取り除けば教室一つ分ぐらいの広さを確保できると思う。
適当な席に座り、少ししたタイミングで倉崎君が全員分の麦茶を配置する。
「ありがとう。そういえばずっと気になってるんだけど、ここって何の部室なの?」
「確かに。俺も彩咲先生に言われてここに来るまでこの部室で活動している話を聞いたことがないし」
「それはそうだろうな。実際何もやってないし」
「何もやってないの!?」
じゃあここはそもそも無断で使用しているとかになるのだろうか。
だとしたら結構やばいことやってると思うけど……。
「だが部活としては彩咲先生の方で新設して申請を通したみたいだ。オレは彩咲先生に頼まれて入部したようなものだからな」
ちゃんと申請は通っているようで安心する。
それにしてもみなちゃんが頼んでまで新設した部活って一体何なんだろう。
「そういえばこの学校の教師は何らかの部活の顧問をする決まりだったわね」
「え、じゃあみなちゃんは他の部活の顧問をやらないためにこの部を設立したってこと?」
「流石にそんなことで部活を新設するわけないだろ」
気づくと部屋に入ってきていたみなちゃんが話に割って入ってきていた。
「先生……客が来るなら先に話を通していてくれ」
「悪いな。すこし重めの仕事を片付けてたんでな」
倉崎君は席を立ち、先生の分の飲み物を用意し始める。
「早速だが、ここに集まってもらった理由についていくつか話す。1つ目は……単刀直入に言おう」
静まり返る部室。
その中でみなちゃんの声だけが響いた。
「佐野梓、という少女の救出だ」




