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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第8話「テスト開けと休日の遊園地」


 テストが終わり、一週間。

 土曜日の朝9時頃。

 今日はみんなで遊びに行く日。

 そのため、綾乃は着て行く服を選んでいた。


「んー……これかな? ……いや、こっちかなぁ」


 何もかもが初めての体験だ。

 友達と一緒に休日を過ごすことがなかった綾乃にとっては友達と遊びに行くための服装を選ぶのも初めて。

 ……とはいっても普段通りの休日の格好をすればいいんだけど。


「おっと、もうこんな時間」


 支度を早めに終わらせて肩掛けポーチを持って玄関を出る。

 ちなみに行先は遊園地。

 綾乃はみんなとの待ち合わせ場所である駅前へと向かうのだった。



 駅前に着くと、土曜日ということもあってか人が賑わっていた。

 時刻は9時40分。

 待ち合わせ時間は10時だった為、結構早めに出てきてしまった。

 おそらく自分でも気づかないうちに早歩きをしていたのだろう。

 どこかで時間を潰そうと思い、周りを見渡す。

 すると本来の待ち合わせ場所に白い帽子をかぶっている千奈ちゃんの姿が見えた。


「おーい、千奈ちゃーん!」


 声を出しながら千奈ちゃんに近づく。

 千奈ちゃんは少しビクッとしながらこちらを向いた。


「あ、綾乃ちゃん、おはよう」

「おはよう! 早いね。待ち合わせの時間にはだいぶ時間があるけど」

「は、はは……実は時間通りに家を出たと思ったんだけど浮かれちゃってたのか早めに来ちゃって……変だよね」


 そっか、千奈ちゃんも私と同じなんだ。

 楽しみで歩みが早くなって、予定より早くついてしまう。

 なんというか、遠足を楽しみにしている小学生の気分といった感じだろうか。


「全然変じゃないよ! 私も5分くらい前に着く予定だったし! むしろ休日に友達に真っ先に会えるのはうれしいよ!」


 早口でそう言う。

 自分でもなんとなく楽しみすぎて興奮してるのがわかる。

 それから少しの間、千奈ちゃんと飲み物を買って話していると、梓ちゃんと姫城君と桜田君がやってきた。


「あれ、金森たちはもう来ていたのか」

「あはは、なんか早く来ちゃってたんだよね……って、なんで姫城君上向いてるの?」

「いや、なんでもないよ。いい天気になってよかったなって思って」


 なんか姫城君がおかしいような気もするけど、みんなで遊園地へと向かうのだった。



 電車に揺られてしばらくすると、目的地である遊園地が見えてくる。

 完全に電車が停車し、電車を降りて徒歩で遊園地へと向かう。


「遊園地だー!!」


 受付でフリーパスを買い、入場する。

 周りを見渡しただけでも定番であるジェットコースターやコーヒーカップ、メリーゴーランドなど、いかにも遊園地といった乗り物があるのがわかる。


「みんな! 何乗る!? 私はジェットコースターとか逆さまになる船とか高いところから落ちるやつとか行きたいんだけど!!」

「絶叫系ばっかり!?」


 梓ちゃんは私の発言に対してそう言いながら青ざめている。


「とりあえず、空いてそうなところから並んで順に乗っていこうか」

「そうだな。それじゃ近場から行ってみるか」


 姫城君と桜田君が先導を切ってくれたため、私たち女子三人は二人のあとについていくのだった。



「……本当にこれに乗るの?」

「ワクワクするよね!!」


 メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った後に来たこの場所。

 名は『デッドタワー』というらしい。

 パンフレットによるとタワー側面についた座席が頂上に達したとき、急落下し、そのあと上下に移動するといったものだ。


「あー……ついに絶叫系に来ちゃったか」

「ん? 紗輝って絶叫系苦手だっけ?」


 あれ、姫城君って絶叫系苦手なのかな?

 だとしたら私たちだけ楽しんでるのはやっぱり……。


「えっと、梓ちゃんも姫城君も無理してるなら他のに……」

「……いや、俺は乗るよ」

「あたしも乗るよ……多分死なないと思うし」


 名前があれだけど死人は出ていないから大丈夫だと思うよ、と声を掛ける前に順番が来てしまった。

 座席に座り、安全確認の点検が行われ、準備が完了したようだ。

 隣では梓ちゃんがガクガクしており、姫城君は特に変わった様子はないように見えるけど……。

 と思ったタイミングで座席が上昇し始めた。


「わぁーすごい」


 ガクガクしていた梓ちゃんだが、上昇するにつれて景色が見えてきたことでそう声をこぼした。

 途端、急落下してその声は悲鳴に変わるのだった。



「本当に……怖かった……」


 生まれたての小鹿みたいになっていた梓ちゃんを抱えてフードコートへと向かう。


「それにしても姫城君が絶叫系が苦手だって思わなかったよ」


 梓ちゃんほどではないけど、足がプルプルしている姫城君。

 そんなに苦手だったのかな……。


「いや……俺はあの乗り物だけやっぱりダメだったみたいだよ……」

「あぁ、そういえば紗輝は急落下が苦手なんだったっけ」


 聞いた話だと姫城君は昔デッドタワーに乗ったときに急落下がトラウマになったらしい。


「千奈ちゃんは意外と絶叫系楽しめてるね?」


 先ほどのデッドタワーで無事なのは私と桜田君と意外にも千奈ちゃんだった。


「う、うん。むしろこういうアトラクションは好きな部類かも」

「本当に意外だな。とりあえず昼飯を食って落ち着いてから次のアトラクションに行こうぜ」


 その後、休憩して梓ちゃんと姫城君が回復したこと昼食を取り再度アトラクションを回ることになった。

 ジェットコースターで再度梓ちゃんがガクガクになってたり。

 二回目のコーヒーカップを回しすぎてみんな気分が悪くなっていたり。

 そして時間が経ち、気づいたころにはもう夕方になっていた。


「もう夕方か、そろそろ引き上げる時間だな」

「えー、もうそんな時間? それじゃあ……最後にみんなであれ乗ろう!」


 私は観覧車を指さす。


「ようやく安全な乗り物に……」

「で、でも綾乃ちゃん、あれ一つに最大4人までしか乗れないよ?」

「それじゃ、裏表で2、3に分かれよう」


 桜田君がそう提案する。

 でも、裏表って何?


「あ、あの、裏表ってなんですか?」


 千奈ちゃんが私の考えてることと同じことを言っていた。


「あー、つまりはだな……」


 要は手のひらを裏か表をせーので出し、丁度半分になるまで繰り返す。

 結果的に裏のチーム、表のチームに分かれるというものらしい。

 今回の場合は割り切れないので2人と3人に分かれるという。


「それじゃ行くぞ。せーの……」


―――


「ねぇ、なんでこんなことになってるの?」

「それは俺と紗輝が裏を出したからだろうよ」


 なぜか俺、姫城紗輝と幼馴染である桜田翔は男二人で観覧車に乗っていた。


「ま、こうなることも予想して行動してたからまあ問題はないだろ」


 いや、まったくわからないんだけど……。

 そんな思考を巡らせるが当然のように翔は話を続ける。


「そんじゃ本題に戻るけど、お前最近好きなやつできたろ?」

「ブッ! おま、なんで!?」

「いや、だってバレバレだし」


 そんなに俺の行動って筒抜けなのか……?


「ま、だからと言って特にどうするわけでもないんだけどな」


 じゃあなぜ聞いたんだろう……。


「だってお前自分からこういうこと言わないし、協力とかしようとするとキレそうになるタイプじゃん」

「待て、人の心の声と会話するな。その通りだけど」


 はぁ、とため息をついて再度話を切りだす。


「……要するに金森に紗輝の好意が全く伝わってないと?」

「まあ、それ以外にも毎回タイミングが悪いんだけどね……」


 直近だと今日の朝、早く駅前にこれていれば金森さんと話せたかもしれないし……。


「確かに金森はだいぶ鈍そうっていうのもあるけど、たぶん紗輝もさり気なさすぎなんじゃないか? あれははっきり言わないと伝わらないタイプの人間だと思うんだが」

「それができていたら苦労なんてしないと思うんだけど」


 でも、実際はそうなのかもしれない。

 もっと積極的に、はっきり行動すれば結果に繋がるのかな。


「まあ……一番の問題は俺が平然としている事なんだけど」

「……? 平然なのはいいことなんじゃ? ……あぁ要は照れ隠しか」


 言ってて恥ずかしくなってきた……。

 翔の言う通りだ。

 金森さんに対して平然を装い照れ隠ししてしまう。

 普段から話題を収集することもあり、何とか会話を繋げてはいるとは思うが、正直これもどこまで続くか。

 といったことを考えているとあることに気づく。


「ん? というか俺は金森さんって言ってないぞ!?」

「いまさら何を。ま、困ったことがあったら言えよな。相談ぐらいにはのってやるよ。それよりほら、あれを見てみろよ」


 翔が指さす方向、そこは金森さんたちのいるゴンドラだった。

 見た限りはしゃぎすぎてゴンドラが揺れており、危なっかしい感じもする。


「楽しそーだよなぁ、なんで俺ら男二人で観覧車乗ってるんだろうな」

「いい加減一回くらい殴っていい?」


 なんだかんだで翔にはすべて悟られている気がするが、逆にこれ以上の相談相手はいないかもしれない。

 また何かあれば相談にのってもらおうと思う紗輝であった。


―――


「いやー、楽しかったねー!」


 観覧車から降り、姫城君たちが降りるのを待つ。

 今日もいろいろあったけど、楽しかったなぁ。

 しばらくして姫城君たちも観覧車から降り、入口へと向かう。

 遊園地の入口を超え、園内から出て振り返る。

 あとの祭といった感じだろうか、楽しかった半面少し寂しい感じがする。


「金森さん」


 しばらく遊園地を見ていたからだろうか姫城君が声を掛けてくれていた。


「また、一緒に来よう」

「……うん」


 少しの名残惜しさを胸に秘めながら遊園地を後にするのだった。


 電車にしばらく揺られる。

 しばらくして私たちの住む町の駅まで戻ってきた。


「お腹すいたねー! なんか食べに行こうよ」

「そうだな、それじゃあ近場で何か食っていくか」


 こうして今日も過ぎて行くのだった。



 その光景を見て立ち止まる。


「……仲、いいんだ」


 無意識にそう呟く。

 その少女、有馬(ありま)夏妃(なつき)はしばらくその場に立ち続けるのだった。

 どうも月見と申します。

 想い紡ぐ道標も2つ目のお話が完結しました。

 とはいっても日常のものであるため、終わりというのも何か違和感がありますが…。

 正直なところ私は日常シーンを書くのが苦手です。

 お話を作るにあたってイベント事やハプニングなどがあるようなことを考えてはいるのですが、こういった青春学園ものでは季節が巡り、その都度イベントが発生します。

 その過程でどうしてもイベントがない時期があるのでちょっと難しいと感じています。


 また、今回は主人公の綾乃だけではなく、姫城紗輝にもスポットを当てています。

 今後はこう言った感じでそれぞれのキャラにスポットを当てて、そのキャラの心情を表現できたらと思っています。


 ともあれ、今回のお話の最後では「有馬夏妃」という新キャラも登場しているので、次回はこの人物に関わるようなお話を書いていきたいと思ってます。

 よければ次回も見ていただけると嬉しいです。


 今回はこんな感じで〆させてもらいます。

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