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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第81話「もう一つの精算」


 朝だ。

 数日の間と比べ、比較的気分は悪くないと思う。

 いうまでもなく、昨日夏妃ちゃんと話し合うことができたのが理由だろう。

 そんなことを考えながら用意を済ませた私は早々といつも通りに通学路を歩き、気づいたらいつもの交差点まできていた。

 時間帯的にはいつもより早いかな?


「あやっちー!」

「うわぁっ!!」


 いきなり死角から誰かが抱きついてくる。

 いや、声で大体察しはつくけれど……。


「び、びっくりした……せんちゃんだよね?」

「あはは、ごめんごめん」


 せんちゃんの腕から解放され、改めてせんちゃんの方へ向き直る。

 そこにはせんちゃんだけではなく、夏妃ちゃんの姿もあった。


「千里、綾乃を困らせない」

「謝ったじゃんー」


 夏妃ちゃんとせんちゃんが二人で揃っている姿もだいぶひさしぶりな感じがする。


「なっちゃんとあやっちが和解できたって聞いて本当によかったよ」

「あはは……心配かけてごめんね」


 改めて私はいい友達に恵まれていると感じる。

 この関係はいつまでも守っていきたいな。


「綾乃ちゃん、と有馬さんにせんちゃんもおはよう」


 声のした方からはすでに千奈ちゃんが来ていたようだった。


「うん。おはよう千奈ちゃん」

「綾乃ちゃん、有馬さんともうまくいったみたいだね」


 この光景を見てそのように言葉をこぼす千奈ちゃん。

 でも、私にはまだやらないといけないことが残っている事も事実だ。


 みんなと合流し、学校へと到着する。

 朝のうちに私はスマホを片手にメッセージを送信した。


 『放課後、体育館裏で待っています』と零人君に。


〜〜


 そして放課後。

 私はみんなに事情を説明して一人体育館裏へと来ていた。

 随分と長引かせてしまった上、私は零人君を振ろうとしているのだ。

 とんでもない罪悪感に苛まれているが、私の決心は変わらない。

 しばらくして体育館の影の方から零人君が姿を表した。


「……こんにちは、綾乃先輩」

「うん、こんにちは」

「……正直、僕はこの先の話は聞きたくないと思ってます」

「それは……ううん、それでも聞いてほしい」


 零人君も大体のことは察しがついているのだろう。

 でもそれじゃ私だけじゃなく、零人君も前には進めない。

 そんな気がする。


「零人君の気持ちはとっても嬉しい。でも、私はずっとすきな人がいたの」

「……知ってましたよ」


 ……そうだったんだ。

 私は周りから見ればとてもわかりやすいタイプの人間なのだろうか?


「だからこそ僕は綾乃先輩を困らせたくなったのかもしれないです」

「え? 困らせるって……」

「……街中に買い物に行った日、告白したのはそういう理由です。もっと僕のことを見て欲しい、そう思っていたから」


 何を言えばいいかわからなくなる。

 でも、好きな人に自分を認識してほしいというのはわかる。


「それに、結局のところ無駄に終わっちゃったみたいですけどね。知ってますか? 姫城先輩って僕の学年でも人気が高いんですよ」

「そ、そうなんだ……」


 初耳だけど、姫城君の人柄の良さから考えるとそれも納得できるような気もする。


「そしてその姫城先輩に彼女ができた。その彼女が綾乃先輩だってこともだいぶ噂になってます」

「えぇ!?」


 そんなに噂になっているの!?

 いや、私は今回それに驚いている場合ではないはずだ。


「零人君」


 神妙な雰囲気を漂わせつつ、零人君に今回伝えるべきことを伝える。


「ごめんなさい。零人君の気持ちは嬉しいけれど、私にはかけがえのない人がいるの。だから零人君の気持ちには応えられない」


 深々と零人君に頭を下げる。


「……顔をあげてください。別に大丈夫ですよ。この数日でもう吹っ切れてるので」

「本当にごめんなさい」

「もう謝らないでください。それじゃあこうさせてください」


 何かを思いついたのか、零人君が何かを提案する。


「ずっと僕を綾乃先輩の後輩でいさせてください」

「……え?」

「今の僕はそれで十分なんです」

「それはもちろん構わないけれど……」


 本当にそれでいいのだろうか。

 顔をあげて零人君の姿を見る。

 ……私が見てもわかるくらいに無理をして笑っているように見える。

 きっと零人君なりの強がりなんだろう。


「うん、そうだね。零人君はずっと私の後輩」

「よかったです。っと、そろそろ僕は部活に行かなきゃなので。綾乃先輩も他のみんなを待たせてるんじゃないですか?」

「あ、うん。それじゃあまたね」


 私はすこし早足で体育館裏を後にする。

 体育館裏から出る前に目線を零人君の方へと向けるとそのまま立ち止まっていたようだった。


「やっぱり、思っていたよりもきついな」


 水戸零人は立ち尽くしたまま、傷心状態へと陥るのだった。


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