第77話「違う立場」
教室へと辿り着き、何気ない会話を繰り返して気付いた頃には予鈴が鳴っていたようで、すでに教室には人が溢れかえっていた。
まだみんなと話していたいという名残惜しさを胸に自分の席へと戻ってゆく。
HRでみなちゃんが今後の予定などを話している中、私はそれを少し気の抜けた感覚で聞いていた。
「そろそろゴールデンウィークも始まるが、それが終わったら中間テストが間近だ。遊びに対して全力であることは構わないが、できる限りの成績は維持するよう心がけるように。それと……」
そうか……ゴールデンウィークが終わったら中間テストが始まるのか。
正直ここ数日まともに授業を聞いていなかった私にとってこれは結構由々しき事態だ。
申し訳ないけれど、またみんなに勉強を教えてもらうことにしよう。
そう思ったことで私はようやく思い出していた。
有馬夏妃という少女について。
確かに私の心の痛みは消え、現状このように前向きな状態へと回復している。
でも、夏妃ちゃんはどうだろうか。
前にあの現場を見て、私の心が壊れてしまいそうになったように今の夏妃ちゃんはこの現状を好ましく思わないのは当然だと思う。
もし私が逆の立場であれば……考えるだけでもこわい。
そして、もう1人。
後輩である水戸零人という少年についても同様だ。
告白を受けて長い時間その答えを保留した上、私は姫城君と付き合うことを決めた。
最低極まりない人間だと思う。
だからこそその2人には伝えないといけないことがいくつかある。
私は2人にかける言葉、伝えたいことをまとめるために授業時間を使って色々と考え込んでいた。
〜〜
「えっと……綾乃ちゃん?」
「……え? どうしたの千奈ちゃん」
気づくと授業は終わっていたようで千奈ちゃんが私の席まで来ていたようだった。
「今日綾乃ちゃんはお昼どうするのかなって」
「え?」
教室の壁にかかっている時計を見る。
すでに午前の授業は終わっており、お昼休みとなっていた。
「え!? うそ!? なんで!?」
待って待って……つまり私、ずっと授業を一切聞かずにあの2人に対することを考えてたっていうの?
「休み時間も話しかけてはいたんだけれど……綾乃ちゃん、心ここにあらずって感じで、やっと戻ってきてくれてよかったと思う」
「そんなに私考え事に熱中してたの!?」
仮にそうだったとして、よく1限目の現国の教科書開きっぱなしで先生たちに叱られなかったなと思う。
「ご、ごめんね? 色々と考え事が多くて……」
「ううん。でも、もしよかったら話して欲しいなって。力になれるかもしれないし」
「……うん。これについては私だけじゃ難しい問題かもしれない。お昼がてらご飯買ってどこか行こっか。そういえば姫城君は?」
周りを見渡すが、姫城君の姿は見当たらない。
「お昼ご飯を買って来るから待っててって言ってたけれど」
「なるほど……じゃあちょっと他のところで私の話聞いてくれるかな。ちょっと姫城君がいると話しにくくて」
「う、うん」
私は席を立ち、教室を千奈ちゃんと共に出るのであった。




