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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第7話「お手伝いとテスト本番」


「よし、今日も頑張ろー!」


 放課後、クラスのみんなは各々帰宅の準備などを始めている中、綾乃がそう声を発した。


「綾乃ちゃん……授業中も頑張ろうよ……」


 発言に梓はそうツッコミを入れる。

 もちろん授業はちゃんと聞いている。

 ……でも、授業中ってたまに気を抜きたくなるのも事実だと思う。

 教科書の隅に落書きするとか。


「え、えっと、今日はプリントを作ってみたので……」

「それはいい考えだね。これで実力や苦手な部分が図れるかもしれないし」


 綾乃の席へ来てそう言う千奈と、後からやってきて千奈の案を肯定する姫城。

 しばらくその話が続き、結果的にはテスト形式で制限時間内に問題を解き、間違えたところを重点的に覚える。

 そして翌日に再度テストを行い、また間違えたところを覚える、といった方式でやるらしい。


「うーん……とにかくやってみればわかるかな?」


 イメージがあまり浮かんではいないけれど、今日もみんなで梓ちゃんの家へと向かうのだった。



 昨日と同様に梓ちゃんの家へ向かう途中、ふとコンビニが視界の片隅に映る。


「あ、そうだ。梓ちゃんの家に行く前にお菓子買っていこうよ! 昨日はそのままお邪魔しちゃったけど」

「た、確かにそうだね。わたしも失念してた」

「それじゃあ、私買ってくるね!!」


 梓は別にいいよ、と言おうとしていたが、その言葉が届くことなく、綾乃は千奈を連れてコンビニへと入っていった。

 それに続くように姫城と桜田も店内に入っていく。


「梓、金森さんは言い出したら聞かない子だと思うよ」

「……確かに。そこがいいところなんだけどね」


 やれやれと思いながら梓も店内に入っていくのだった。


 梓が店内に入ると、すでに綾乃の持っている買い物かごには大量のお菓子が入っていた。


「綾乃ちゃん!? さすがにその量は多くないかな!?」

「大丈夫!! たけのこのやつとか最中とかポテチとか最中とかだから!!」


 何が大丈夫なのだろう、と綾乃を除く皆が思った。

 その雰囲気の中、綾乃はさらに話を続ける。


「なんならこれ全部カロリーゼロみたいなものだから!」

「いや金森、さすがにそれは無理があるぞ」


 桜田が耐え切れずにツッコミを入れる。

 どう考えてもほとんどが高カロリーだ。

 その後、どうにか姫城が綾乃を落ち着かせ、量を調節することに成功した。



「金森……なぜ最中が人数と比べて多いんだ?」


 買い物を終えて店内から出た際、桜田が早速ツッコミを入れる。

 なぜか買った最中の数が12個もあるからだろう。


「それは私の大好物だからだよ!」

「……そうか」


 結果的に桜田は折れ、梓の家へと向かっていくのであった。



 昨日と同様に梓の部屋に案内され、学校で言ってた通り千奈が持ってきたプリントの問題を解いていく。

 そして数分が経ち、姫城と千奈が回収したプリントを眺めはじめる。


「……翔、国語の問3の抜き出し問題なんだけどさ、なんて書いたか覚えてる?」

「もちろんだ。答えは『石ノ森』だったか」


 国語の問3の抜き出し問題は確か『文中の【勇敢な】に該当する人物を3文字で抜き出しなさい』だったはず。


「うん。俺もその答えに行きついたんだけど、なんでこのプリントには『大勇者』って書いてあんの?」


 それを聞いて全員が桜田のプリントを確認する。

 確かに問3の答えに『大勇者』と書かれていた。


「しかも、これよく見たら横文字で抜き出してる……逆によく見つけたね」

「わっ、本当だ」


 このような感じで勉強会は進んでいくのであった。



 しばらくして、一旦休憩を挟む形となった。

 梓ちゃんと桜田君は飲み物などの補充に、千奈ちゃんはそれについていく形でお手洗いへと向かっていった。


「なんでこう勉強って覚えることが多いのかなぁ……」

「ははっ、でも今勉強しておいた方がいいんじゃないかな。将来やりたいことをやるためにもさ」


 将来やりたいこと……まだ遠いかもしれないけど、それを考えると確かに勉強も悪いものではない気がしてくる……かもしれない。


「ということは、もしかして姫城君って将来やりたいことがあるの?」

「……うん。俺は小説家になりたいんだ。人の感情や表現、感動、それが文章で伝えられる。俺はそれができる人間になりたいんだ」


 姫城君が描く小説家の理想。

 小説に関してそんなに詳しいわけではないけど、自分のできることで何かを伝えられるようになりたい。

 私にはそれがわかるような気がした。


「そうだ、金森さん。テストが終わったらなんだけどさ、よかったらどこかに遊びに行かない……?」


 話題を変えるようにそっぽを向きながらそう答える姫城。

 どこかに……これはいわゆる『打ち上げ』というものだろうか?


「うん。みんなで行こう!」


 みんなで一緒に何かをやり遂げ、そしてそれを分かち合う。

 そんな光景を考えると勉強というものも悪いものではないような気がしてきた。


「……そうだね。みんなで行こうか」


 そして、会話をしていて一つ気づいたことがあった。


「みんな遅くない?」


 姫城君と話してて時間が20分ほど経っていることに気づく。

 昨日は戻ってくるのに10分もかからなかったはず。


「確かにちょっと遅いね。ちょっとした覗きに行こうか」


 それに同意すると、部屋を出て一階へと向かうのだった。



 一階に降りると、店内の方がガヤガヤとしているのがわかる。


「あ、これは……」


 何かに気づいたのか姫城はすぐに店内の方へ向かっていく。

 それを追うように綾乃もついて行く。

 店内を覗くと、多くのお客さんで賑わっており、外に行列ができているほどだった。

 さらに梓の両親だけではなく、梓本人も接客をしており、厨房では桜田となぜか千奈の姿まであった。


「えぇ!? なんで!?」

「話は後にしようか。とにかく忙しそうだし、俺たちも手伝いに行こう」


 こくりと綾乃はうなずき、梓の母親に軽く概要を聞き、姫城と共に接客を始める。

 メニューを聞き、それを厨房に伝えたり、テーブルに置いてある水の残量を定期的に確認し、なかったら補充する。

 料理が出来上がったら迅速に注文したお客さんに運ぶ。

 料理を食べ終わり、お会計を済ませたテーブルを片付け、次のお客さんが入れる状態にする。

 そんな感じを繰り返し、気づいたら客足も減り、店内は落ち着いていった。


「いやぁ、ごめんね。急に手伝ってもらって。お礼といってはなんだけど、ご飯食べて行って!」

「いいんですか!?」

「翔ちゃんも紗輝ちゃんもメニュー決まったら言ってね」

「ういっす」


 割烹着を来た桜田は着替える為に店の奥へと戻り、着替えを終えた制服姿の姫城は席に着く。

 綾乃と厨房にいた千奈も同じく席に着き、少ししてから梓と桜田も着替えを終えて席に着いた。


「それじゃ俺はいつもの唐揚げ定食で」

「俺は鯖味噌定食でお願いします」

「あたしは豚汁定食ー」

「そ、それじゃあわたしは野菜炒め定食でお願いします」

「うーん……」


 綾乃を除く4人はもう注文を決めたが、綾乃はメニューを眺め続けていた。

 もちろん理由はメニューに悩んでいる事なのだが、綾乃にはもう一つ悩んでいることがあった。


「梓ちゃん……」

「どうしたの?」

「メニューって二つ頼んでもいいかな!?」

「え!? 大丈夫だけど量多いよ……?」

「大丈夫! さっき運んでた時に量は見てたから!」


 そういう問題じゃ……と梓は思っていたが、綾乃はキラキラした目でメニューを眺めていた。


「それじゃあ、とりあえずミックスフライ定食とねぎとろ丼でお願いします!!」

「おぉ……そんな細い体のどこに入るんだ…」



 注文を終え、少ししてからそれぞれ頼んだ料理が運ばれてくる。


「「いただきまーす!!」」


 皆の声が重なる。

 綾乃の目の前にある運ばれてきた料理はとんかつと唐揚げとエビフライがキャベツの上に乗った皿とみそ汁にご飯。

 そしてねぎとろ丼。


「……金森、炭水化物多くないか?」

「大丈夫!」


 黙々と食べ始める綾乃。


「なんか金森の食べる姿見てるとあれだな……」

「言おうとしてることは俺もわかる気がする……」

「う、うん……」

「あたしも何となく……」


 綾乃が頬張って食べる姿は完全にリスのようだ、と綾乃を見て思う4人。

 その勢いは止まることはなく、綾乃は気づいたころには5人の中で一番早く食べ終わっていた。


「おいしかったぁー」

「ほんとに食ったのか……しかも食うの早っ!」

「そこまで食べてなんでその体系維持できるのー……」

「まだ食べれるよ!」


 そんな綾乃に呆れつつある4人に綾乃が話を切り出す。


「さっき姫城君と話してたんだけど、テストが終わったら遊びに行こうって」

「ほぉー? それは紗輝が提案したのか?」


 うん、とうなずくと、何やら桜田君は梓ちゃんと千奈ちゃんを連れて少し離れたところに連れて行く。

 そして桜田は綾乃と姫城に聞こえないボリュームで話し始める。


「なあ二人とも、どう思う?」

「どうって?」


 梓と千奈はぽかんとしている。


「高垣はあんまりわからんと思うけど、あの紗輝が積極的に女子を遊びに誘ったことがあったか?」

「それはまあ、確かにないとは思うけど……ん? それってもしかして……」

「そういうこと」


 一度綾乃と姫城を見てから再度向き直る桜田。

 そして千奈はそれに対してまだ理解ができていない様子であった。


「え、えっと、つまりどういうことなのかな……?」

「つまり、あの紗輝が金森に対して特別な感情を抱いてるんじゃないかということ」


 それを聞いた千奈は少し考えてから驚きの声を発した。


「だから、俺らは何があっても余計なことはしないでおこうぜ」

「うん。わかったよー」


 千奈もこくりと頷き、再度綾乃たちの元へ戻る。


「……お前たち何の話してたんだ?」

「いや、なんでもない。それよりテスト開けの話だろ? どこに行く?」

「それを考えるのもテスト開けにしよう。今はみんなテスト勉強に集中すること」


 かくして、本日もいろいろあったけど勉強会は終了したのであった。



 そして日は過ぎていき、テスト期間が終了した。

 みんなそれぞれ自分の実力を出したのだろうか。

 少なくとも私はこの4日間のテスト期間気が気ではなかった。


「やっと終わったぁー……」


 最後のテストが終了し、机に突っ伏す。


「安堵してるけど、一応もう一時間だけ残ってるっぽいよー」


 隣の席の梓がそう言う。

 正直なところ普段頭をそんなに使わないから疲労感が……。


「絵に描いたようにぐったりしてるね……」


 いつも通り綾乃たちの席まで来て若干呆れたような声で姫城が言った。


「ちなみにこの学校は次の時間終ったらテストの結果が張り出されるらしいよ」

「早い!!」


 思うより最初に声が出ていた。


「というか紗輝……なんでそんなこと知ってるの?」


 確かに姫城君なんでこんなこと知ってるんだろう。

 なぜか毎回いろいろ知っているような……。


「この学校を調べてたからね。……主に彩咲先生に聞いたけど」

「なるほど……でもなんでそんなに調べてるの?」


 その問いに対し、姫城は少し考えてから答えた。


「そうだね、一言で言うならネタになる、からかな」

「………?」


 何か理由があるみたいだけど、私にはよくわからなかった。

 梓ちゃんも同じように頭の上に?が浮かんでいる。


「まあとにかく、終った後も気が抜けないってこと」


 さらに聞いた話だと、テスト結果は張り出されるが、テスト自体はその授業に返されるらしい。

 そして返されたテストが30点以下だと追試があるらしい。

 できれば追試にはならないように願おう……。

 そんな話をしながら次の授業が始まるのだった。



 HRが終了し、本日の授業が終了する。

 みなちゃん先生は姫城君が言った通りテスト結果の話をしていた。

 どうやら張り出されるのはそれぞれの学年の渡り廊下の掲示板のようで、ほとんどの生徒はそこに集まっていた。

 今か今かと待つ生徒の前に丸めた大きな紙を持った先生が掲示板の前に立つ。

 そしてその丸めてあった紙を掲示板に張り出した。

 どうやらそこに張り出されるのは100位までのようで、学年はおよそ180人ほどであると姫城君は教えてくれた。

 1位から見て行き、最初に見知った名前を見たのは千奈ちゃんだった。


「千奈ちゃん8位だって! すごい!」


 そしてその次は姫城君、そして桜田君の名前もあった。


「31位……まあ悪くないかな」

「俺は93位か、丁度学年の半分くらいだな」


 しばらく順位を眺めているが、私と梓ちゃんは100位以内ではないようだった。

 するとあることに気づく。


「……もしかしてこれって100位以内に入ってないと赤点の可能性があるってこと……?」

「まあ、そうなるね」


 ……赤点でないことを祈ろうと思う綾乃であった。


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