第73話「告白」
しばらく思考は停止していた。
それもそのはずだ。
今までずっと夢だと思っていた出来事が現実だったという証拠がここにある。
その証拠が姫城くんの所持物である手帳から出てきた。
段々と組み上がっていく思考の最中、私は手帳と写真を拾い上げて廊下を駆け抜けていた。
その間、私の思考がクリアになっていく。
……大丈夫。
今なら正面から話せる。
そして私は聞きたい、話したい。
姫城くんのことを。
〜〜
しばらくして足をとめる。
場所は私たちの教室である2−4の扉の前だ。
きっとこの奥に姫城くんがいる。
なぜか今の私にはその確信がある。
深呼吸をし、心を落ち着かせる。
そして教室の扉に手をかけて、ゆっくりと開いた。
教室内は夕暮れの日差しによってオレンジ色に彩られ、その中で窓際に立つ1人の少年の姿があった。
少年……姫城くんは開かれた扉に気付き、こちらを向く。
その姿は1年前、私が教室で初めて姫城くんと話したあの日と重なった。
「「………」」
教室には私たち2人。
そして話したいことはいっぱいあるのに第一声が出ない。
姫城くんも黙ったままだ。
しかしそれは当たり前かもしれない。
今の今まで避けるように接してきていたのだから。
だから私は第一声を発した。
「私……私、友達ができたよ」
自分でも驚くほどに既知の事実を話していた。
「自分のことをちゃんと話して、気の許せるほどの友達ができたよ」
今まで話せなかったことを報告していくかのように。
「でも私はその友達を避けちゃってた。それでも……」
姫城くんとの空いていた距離を徒歩で詰めてゆく。
「やっぱり私はみんなと……姫城くんと一緒にいたいよ」
姫城くんの目の前で立ち止まり、俯きながら姫城くんの手帳を差し出す。
「金森さ……」
「すき……姫城くんが」
涙を堪えながら、いや、堪えきれずに涙を流しながら私は最後にそれだけ言った。
「………」
姫城くんは無言で私の首に腕を回し、優しく抱きしめてくれた。
私は涙をとめることができず、しばらくの間姫城くんの胸を借りて泣き続けていた。
〜〜
「……ごめん」
冷静になった私は姫城くんに対してそう言った。
「ううん。それは大丈夫だけど……」
お互い顔を逸らしながら話す。
思ったことを口に出していたから、いつの間にか告白していることに冷静になってから気付いた。
我ながらとても大胆なことをやった自信がある。
「と、とりあえず帰ろっか。そろそろ日が暮れそうだし」
「う、うん。そうだね」
自分の荷物を持ち、校舎を出る。
帰り道の途中、会話は無かった。
そしていつもの交差点。
姫城くんと入学式の前に出会った場所。
いつも帰り道はここまで。
「……金森さん」
静寂の中、姫城くんが私を呼ぶ。
「もし、この後時間があるならちょっと寄り道しない? その、さっきのこともあるし」
相変わらず顔をお互い合わせられずにそう提案をした。
「う、うん」
ぎこちない了承の返事をし、姫城くんが歩き出す。
私はそれについていく形となった。




