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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第68話「面影」


 数日が経った。

 いつものように朝起きて、朝食をとり、少し遅めの時間に学校へ向かう。

 お母さんやお父さんに『何かあった?』と聞かれたが、作り笑いを浮かべて『なんでもない』と答える。

 学校では無気力に授業を受け、休み時間は教室にいることができず、校内を当てもなく移動する。

 ……正直こんなことをしても何も変わらないことは知っている。

 それに気分だって変わるわけじゃない。

 ただ、何かをしていないと気持ちが押しつぶされそうになる。

 それを紛らわせるだけの行動だった。


 こうして1日を無駄に過ごし、放課後となる。

 私は出来るだけ誰とも話したくなくて放課後になってもすぐに教室を後にする。

 ここ数日クラスでの会話はおろか、千奈ちゃんとすらまともに話していない。

 机にかかっている鞄を肩にかけ、教室を出る。


 校舎を出た後も家に帰る気にはなれず、適当な場所で時間を潰す。

 普段行かないような小道を進んだり、進んだ先が見覚えのある道に続いていたりと色々と発見がある。

 まるで子供の頃に戻ったようなそんな感覚。

 こうしている間だけ、不思議と気持ちが軽くなったような感じがした。


 しばらく小道を歩くと、少し広い通りに出る。

 あれ……?

 身に覚えがある。

 ここは前に通ったことがある。

 いつだったかはわからないけれど、朧げな記憶を頼りに私は歩き出す。

 ……まるで誰かに手を引かれるかのように。


 少し歩き続けると、目的地にたどり着いた。


「ここって……」


 そこは公園だった。

 しかしそれは私にとってただの公園という意味を成していなかった。


 夢の中で出会った少年と初めて出会った公園だった。


 その公園を見渡すと記憶の中より遊具が減っているが、確かに面影が残っている。

 つまり、あの夢の出来事は現実……?

 そのようなことを考えていると、公園のベンチに座り込む人がいることに気づく。

 見たところ私と同じ学校の制服のような……。


「あれ?」

「ん? 金森か?」


 ベンチに座っていたのは桜田くんだった。


「え? なんでここに?」

「それはこっちの台詞だ」


 そう返事を返してくる桜田くんは喧嘩でもしたのか顔中が傷だらけだった。


「って、どうしたのその傷!?」

「……今気づいたのか。喧嘩したんだよ」

「喧嘩って……誰と? なんで喧嘩なんて……」

「沙輝とだよ。理由は……多分言っても分かんねえと思うから言わん。学校内で騒ぎ起こしちまったから俺も沙輝も自宅謹慎って言われて3日間停学だ。休日挟むから実質5連休だな」


 頭の中が真っ白になった。

 仲のいい姫城くんと桜田くんが喧嘩?

 なんでそんなことになったんだろう。

 ……いや、私がそんなこと言えた義理じゃない。


「まあ、せっかくだから少し話さないか?」

「え? というか、桜田くん自宅謹慎中じゃ……?」

「細かいこと気にすんなって。それより、そうだな」


 桜田くんは顔を上げて空を見上げる。

 その顔は停学中とは思えないほどに晴れ晴れとしているように見える。


「こんなに沙輝とマジになって喧嘩したの小学校以来だな」

「え!? 前にも喧嘩したの!?」

「まあな。と言うより俺は沙輝と以外怪我するまで喧嘩したことなんてないぜ?」

「いやそうじゃなくて……」

「聞くか? 小学校の頃の話だけど」


 戸惑い気味な私に対し、桜田くんがそう問いかけてくる。

 その言葉に私は静かに頷いた。


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