第67話「無気力」
目が覚める。
時刻を確認するといつも平日に起きる時間より少しだけ遅い時間だった。
身支度を済ませて家を出る。
遅刻はしないだろうけれど、このままのペースでは学校に着くのはギリギリになるだろう。
でも今の私にはそこまで考える余裕がなかった。
と言うより考える気力がなかった。
一昨日の土曜日のあの光景が脳裏に焼き付いてしまい、日曜日もほとんど何もやらずに過ごしていた。
そして月曜日の今日も放心状態で学校へと向かっていた。
世間で言われている憂鬱な状態とはこう言うことを言うのだろうか。
〜〜
学校へたどり着き、自分の教室に入ったあたりでチャイムがなる。
席についた私はただ無心に授業を受けていた。
正直授業内容は一切頭に入ってこなかった。
昼休みに入ったけれど、いつもなら食事に向かうはずが、今日は食欲がない。
でもじっとしていられずに席を立って廊下へと出る。
当てがあるわけではない。
ただ無心で廊下を歩き続ける。
それだけだった。
結局食事も取らずに昼休みを終え、教室へ戻ってくる。
午後の授業も相変わらず頭に入らず聞き流しているだけだった。
そして気づいた頃には放課後になっていた。
……帰ろうかな。
そう思い、机の横にかけている鞄に手をかけようとするとすぐそばに人影があることに気づく。
「綾乃ちゃん……」
そこには千奈ちゃんの姿があった。
「千奈ちゃん……」
「ずっと声をかけようと思っていたんだけれど、ちょっとかけにくくて……単刀直入に聞くね」
確認するかのようにそう声をかけてくる。
正直今は何かを答えられるような精神状態ではないんだけれど……。
「土曜日に何かあった?」
「………」
千奈ちゃんのことだ。
私の行動から推測して大体何があったか察しがついているのかもしれない。
「綾乃ちゃん、もしかしたら気づいていないかもしれないんだけれど、今日有馬さんお休みしているようなの」
……え?
夏紀ちゃんが休み?
だって夏妃ちゃんは……いや、もうそれは私の考える範疇にはない。
「そう、なんだ」
鞄を肩にかけ、教室を出るために歩みを進める。
「ごめん。今日はもう帰るよ」
「うん……何かあったらいつでも言ってね」
特にそれに対して返事をすることもなく教室を後にする。
……千奈ちゃんには悪いことをした。
あんな態度を取らなくてもよかったのに。
悪いのは全て私なのに。
教室を出て下駄箱前へと向かうと、そこに姫城くんの姿があった。
「金森さん」
「………」
少し立ち止まるが、居心地が悪く俯いたまま素通りする。
そして下駄箱から自分の革靴に履き替える。
「金森さん!!」
校舎を出た後に私を呼ぶ姫城くんの声が響いたが、私は振り向くことなく帰路へとついた。
……私は最低だ。
不安に押しつぶされそうな心を守るために大切な人達との関係を切るような行動ばかりしている。
でも今の私にはどうすれば良いか、何もわからなかった。




