表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想い紡ぐ道標  作者: 月見
69/133

第63話「姫城を探して」


 時は戻り、綾乃が零人たちと買い物に行く約束をした日の昼休み。

 有馬夏妃はずっと考えていた。

 私は姫城に近づけているのだろうかと。

 正直なところ最近姫城と話をする状況というのが大抵他の誰かがいる場合という現状だった。

 綾乃には喧嘩を売るような発言をしている私なのに、当の私が姫城と2人きりになるような行動を起こしていないことは問題だろう。

 思い立ったら行動したいと思っているが、どうにもそのきっかけが掴めないでいた。


「はぁ……」

「はぁ……」


 うん?

 今ため息がハモったような……。

 周りを見渡すと表情が暗めの綾乃が出したものだというのが何となくわかった。

 綾乃は自身のことで頭がいっぱいなのか私のため息には気づいていない様子のようだ。

 綾乃がああなっている理由はおおよそ想像がつく。

 というよりわからない方がおかしいだろう。

 原因は後輩である男子が最近は休み時間ごとに来ていることだ。

 それには綾乃も参っているようだが、はっきり言ってしまえばいいのにとも思う。

 ……いずれにしろ私より人間関係が多い分、考え方が違うのだろうけれど。

 しかし、それでもあの後輩には私にない積極性があることは確かだと思う。

 流石にあれは逆効果であることは見て取れるが、たまには自分から行動してみるのもいいのかもしれない。


 ……違う。

 私は行動を全然していない。

 バレンタインの時だってそうだった。

 だからあの時、私は変わろうと思ったはずだ。

 だから、だからこそ私は教室を出て姫城を探し始めた。


 ………。

 全然見つからない……。

 そもそも姫城が行きそうな場所とか全然知らないことに気づく。

 それだけではなく、私は姫城のことをほとんど知らないのではないだろうか。

 中学が一緒で少しだけ会話をするだけの関係。

 これが私の姫城の今も昔も変わらない関係だった。


 なんだ、私全然すきな人のこと知らないじゃない。

 今まで勉強しかしてこなかったことがここに来て響くなんて……。

 落胆、というよりはちょっとした後悔を胸に校舎から外に出る。

 その先の自販機に見覚えのある男子生徒が見えた。

 姫城の友人である桜田だ。

 彼なら姫城のいる場所を知っているかもしれない。


「桜田」

「ん? 有馬か? お前から話しかけてくるなんて珍しいな」

「……そうね。それより姫城がどこにいるか知らないかしら?」

「沙輝か? それなら裏庭から通れる校舎裏に行ってると思うだろうが……」

「なるほど、感謝するわ」


 桜田の言っていたようにひとまず裏庭へと向かう。

 裏庭へとつくと、まばらに人がいることがわかるが姫城の姿はない。

 校舎の位置からして壁沿いに進んでいけば校舎裏の方へと繋がっていくはず。

 しばらく校舎の壁沿いに歩いていく。

 ここまでくると人通りはほとんどないので、この校舎裏はある意味穴場と言っていいのかもしれない。

 欠点といえばここまでくるのに若干時間がかかるくらいだろう。

 校舎の角の方へと着いたので曲がると、そこに姫城はいた。


「あれ? 有馬さん?」


 姫城が私を見て不思議そうな顔をしていた。

 確かに私がここまでくるのはかなり珍しいことだ。


「姫城……えっと」


 ここまで来たのに何をどう話せばいいのだろうか。

 やってることが綾乃と同じ後先を考えない行動だということに気づく。

 綾乃もこういう気持ちだったのだろう。

 だとしたら結構ひどいことを言ってしまっていたのかもしれない。

 それよりも今置かれてい現状をどうにかすることが重要だ。

 頭の中で言葉を紡ぎ出そうとするが、正解とはいえない回答ばかり出てくる。


「あ、そうだ。ちょっと前に見つけたんだけど」


 スマホを操作し、少ししてからその画面を私に見せてくる。

 スマホ画面に映し出された内容はとどろきくんのイベントのようだった。


「今週末にイベントがあるみたいだから機会があったら教えようかと思ってたんだ」


 私がとどろきくん好きだと知っているのだろう姫城はそう言った。

 確かに私はSNSとかをやっていないのでそういう情報は提示されるとありがたい。

 それにしてもそのことを話してはいないのだけど、それは姫城が周りをよく見ているということだろう。


「やっぱり人が集まるところは苦手だった?」

「い、いえ。そういうわけじゃなくて」


 ただ単に言葉が出てこないだけだ。

 必死に考え、最適解の答えを発する。


「できたら一緒に来てほしい」


 そう言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ