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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第59話「久しぶりの飼育小屋」


 飼育小屋に向かう途中、私はふと思ったことを口に出していた。


「あれ? そういえば石川君は?」

「綾乃ちゃん……柊くんはピアノのコンクールで数日お休みだって朝のHRでも言ってたよ」


 そ、そうだったんだ……。

 ここ最近は零人君のことで頭がいっぱいいっぱいになっていたからHRをまともに聞いてすらいなかった。

 それにしても石川君がコンクールに出るのか……。


「千奈ちゃんは応援とか行かなくていいの?」

「コンクールって言ってもどちらかというとリハビリ期間として少し長めに休みを取ってるみたい。だからここ数日は集中するために1人で練習するって言ってた。学校側もそれで承諾したみたい」

「そっか、ちょっと寂しいね」

「うん。でもわたしは柊くんに頑張って欲しいと思ってるから」


 千奈ちゃんの横顔は少し寂しそうだったけどとても前向きなものだった。

 私が言うのものなんだけれど、千奈ちゃんも着実に成長をしているなんだなと感じる。

 それはきっと自分の気持ちに色々と整理ができていないからそう思えているのだろう。


 しばらく歩き、校舎の外にある飼育小屋へとたどり着く。

 私は一年ほど前に千奈ちゃんを追いかけてきた時以来来ることはなかったため、少しだけワクワクしていた。

 飼育小屋の中からうさぎがこちらを見ているのに気づく。

 このうさぎは前に見たことがある。

 確か初めてここにきた時に見かけたうさぎだったはず。

 前に比べてしっかりと成長しているようで、見たまんま大きくなっていることがわかる。


「ねえ千奈ちゃん……」

「どうしたの?」

「このうさぎめっちゃモフりたい!!」

「あぁ、うん。警戒さえされなければ大丈夫だと思うよ」


 ちょっと苦笑いをしながらそう言う千奈ちゃんは飼育小屋の鍵を開け、中へと入ってゆく。

 飼育小屋は動物が逃げ出さないように二重の扉があり、一つ目の扉を開けて入り、一つ目の扉を閉めたら二つ目の扉を開けるといった具合に考えられて作られているようだった。

 私も千奈ちゃんと同じように小屋内に入り、動物達の目の前にやってきた。

 ここの動物達の一定数は人間慣れをしている影響か普段ここにこない私のような人間の前でも逃げずに普段通りの動きをしていた。

 そして先程目の合ったうさぎを前に、ゆっくりと手を差し伸べる。

 うさぎの頭に手を置き、ゆっくりと撫でてゆく。

 うさぎは特に動かずに撫でられていた。


「あぁー……もふもふだよ」

「そういえば動物を撫でるとストレス解消とかの効果があるみたい」

「へぇー、まあ私はあんまりストレスと感じるような事ってないんだけどね」


 会話の最中、千奈ちゃんは慣れた手つきで小屋内のトイレ掃除や餌などの補充などをテキパキとこなす。


「これでよしっと」


 しばらくして一通り小屋内の作業を終えたようだった。


「もしかしてもう出る感じ?」


 私はまだうさぎをモフれるわけだけれど、千奈ちゃんが出るとなれば諦めるしかないだろう。


「ううん。もうちょっとここにいるよ。わたしも動物と触れ合いたいしね」


 宣言通り、千奈ちゃんもうさぎを撫でていた。


「そういえば綾乃ちゃん。聞いていいかな?」


 先ほどとは少し違うトーンでそう聞いてきた。

 何だろう。

 重要な話をしようとしているのだろうか。


「改めて聞く形になっちゃうけれど、綾乃ちゃんは水戸くんの事どう思っているの?」

「どうって……」


 以前言った通りの内容。

 だから以前と同じように答える。


「零人君とは先輩と後輩の……」

「そうじゃなくて」


 言い切る前に千奈ちゃんの言葉がわたしの言葉を遮る。


「うーん……ちょっとどう聞けばいいのかわからないけれど、ちょっとわたしの見た感想をいっていい?」


 いまいち把握できていない部分が多いのだが、千奈ちゃんは私にどのような回答を求めているのだろうか。


「う、うん。どう言うことかわからないけれどとりあえず聞こうかな」

「それじゃあ、水戸くんって多分だけれど綾乃ちゃんのことすきだよね?」

「……うん?」


 千奈ちゃんのその発言に私は少し困惑というか驚きといった類の声を上げるのだった。


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