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想い紡ぐ道標  作者: 月見
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第57話「中学時代の金森綾乃」


「……え?」


 白浜さんの発言に俺は驚きを隠せない。

 金森さんのあの性格だ。

 他人に嫌われるような部分が正直なところ俺にはわからない。

 むしろ好かれるような性格をしていると思うんだけど……。


「わかりやすく驚いた顔をしてますね。本題に入りますけど、先輩方から見て綾乃先輩ってどんな印象ですか?」

「そうだね……まず明るいところかな。それに前向きで運動が好きで……」

「なるほどです。大体わかりました」

「え、早くない?」

「この時点で先輩方から見た印象がわかったので」


 ……まだ印象は色々あるんだけど、この時点でわかったということはすでに話した印象の中で矛盾点が発生したということだろうか。

 だとしたらその矛盾点ってなんだろう?

 ここ一年間金森さんを近くで見てきたけれど、考えうる点は俺の中で一つしか浮かばなかった。


「……中学時代との印象、というより性格が少し変わったことが原因?」

「中々鋭いですね。でも本題の嫌われている部分については少し違いますけど」


 すると白浜さんは立ち上がり、スカートに付いた砂を払う。


「ちょっと喋りすぎたので飲み物でも買ってきます。なので待っててください」

「あぁ、それなら俺が行く。お前らなにがいい?」


 先ほどから空気と化していた翔がそう名乗り出ていた。


「そうですか。それじゃあ無糖の紅茶でお願いします」

「俺は大丈夫」

「了解。話は続けてていいぞ」


 それだけ言い残して翔は去っていった。

 恐らくだけど、翔なりにこの先を聞くのに気を使ったんじゃないかと思う。

 翔が去ったことでその場には俺と白浜さんだけが残っていた。

 白浜さんは俺の隣に再度座り直し、口を開いた。


「時間はあまりないようですのでできるだけ手短に話しますね」


 白浜さんも翔が気を遣ってこの場を離れたのに気づいているようで、それを踏まえて説明を始める。


「まず、中学時代のゆいかは陸上部のマネージャーをやってました。その理由はなんとなく分かりますよね?」

「まあ大体は」


 大方、水戸が陸上部に入ったことで追いかけるようにマネージャーになったと言ったところだろう。

 そして今までの事を踏まえると水戸は金森さんがいるから陸上部に入部した。

 恐らくここはそれで間違いがないはずだ。


「じゃあ色々端折りますけど、そういった経緯でゆいかは綾乃先輩と関わる機会が多かったんです。主にれいちゃんと一緒にってことが多かったですが」


 話から察するに、中学時代の部活動内で水戸が金森さんの元に話しかけにいくのは想像がつく。

 数日水戸を見た感じだと部活の小休憩などの合間を縫って話しかけに行ってたんだろうな……。


「それで話を戻しますが、中学時代の綾乃先輩は今のようにあんなに笑うような人じゃなかったんです。むしろ逆の性格といっても差し支えないくらいには愛想笑いしかしないような人というべきでしょうか」

「愛想笑い……」


 中学時代の金森さんをよく知らないからわからない部分が多いけど、今の金森さんを見る限り逆の性格と言われても信じ難い。

 ……入学前、俺に笑みをこぼした姿も今までの笑顔もきっと本心だったはずだから。


「ですが、綾乃先輩はゆいかから見ても可愛い人です。沙輝先輩も綾乃先輩のこと可愛いと思いますよね?」

「え!? ……う、うん。そうだね」


 確かに間違いではないし俺自身もそう思うのだが、唐突にそういう話題を振られると心の準備ができていないこともあり言い淀んでしまう。


「沙輝先輩がそう思ったように、綾乃先輩は陰ながら男子からの人気が高かったようです。ゆいかが見ていた限りでは綾乃先輩はそういう性格であったがために知らないうちに女子からの反感を買っていたみたいです」

「ちょ、ちょっと待って。でもそれって金森さんが悪い訳じゃないよね?」

「よく考えてみてください。そうですね……沙輝先輩でいうならば、れいちゃんと綾乃先輩を見た感じです」


 ……確かに、そう言われてみればぐうの音もでない。


「そして徐々にゆいか達を除いて綾乃先輩の周りには友好関係が結べるような女子は居なくなっていった。と、まあそんな感じです。正直ゆいかからすればその男子も女子もまだまだ子供だと思いますけどね」


 白浜さんは最後に微かにフォローするような感じでそう言ったけど、実際俺は納得してしまった。

 そして立場は違えど、俺も似たようなことをしてしまっているのかもしれない。

 そう考えると少し罪悪感に苛まれるような感覚がある。


「……少し喋りすぎたかもしれないですね。でも、綾乃先輩の誰にも敵対心を抱かないのは人に優しいってことだと思うのでゆいかはいいところだと思いますよ」


 再度フォローするような形で白浜さんはそういった。


「話は終わったか?」

「うわっ! びっくりした!」


 いつの間にか翔の姿があり、普通に驚いた。


「ええ、ちょっと前に終わったところですよ」

「そうか。ほい、紅茶」


 翔は手に持っていたペットボトルの紅茶を白浜さんに渡す。


「ありがとうございます。今お金渡しますね」

「いや、情報料としてそれはやるよ。後で沙輝に請求でもしとくさ」

「そうですか。そういうことならもらっておきますね」


 そういって白浜さんは立ち上がる。

 恐らく役目を果たしたため、この場を去る気なのだろう。


「白浜さん。ありがとう」

「……名前」

「え?」

「先輩方もゆいかのことは名前で呼んでください。一部を除いてみんなにはそう呼んでもらってるので」

「わかったよ。結衣華さん」

「またな、結衣華」


 結衣華さんは一礼してその場を去っていった。

 今回の結衣華さんの話を聞いて、俺は金森さんの知らないことが多いと知った。

 だからこそ、もっと金森さんのことを知りたいと思った。


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