第51話「色」
この世界には『力』を持った人間というものが存在する。
『力』といっても主に腕力や戦略といったものではなく、ある特定の人間にのみ使用できる一種の魔法のような存在だ。
だが、大多数の人間はその『力』という存在を知らない。
認識できていないという方が正しいのだろうか。
それは『力』を持った本人ですら認識ができない場合もある。
オレは……倉崎錬磨は何度かそのような光景を見たことがある。
オレは昔から一部の人間から出る『色』を視認する事ができた。
生まれつきなのか物心がついた頃にはそれが日常となっており、特に気にかけることもなく日々を過ごしていた。
小学生の頃だろうか、人が行方不明になるといった事件がニュースで公表された。
オレとはなんの関わりもないし、ましてや知り合いがいるわけでもない。
だが、そのニュースで映し出された事件現場にははっきりと『色』が見えた。
最初は特に気にかけることもなかったが、時間をおいて何度か同じ事件が繰り返しニュースで流れていた。
神隠しにあった人間はそれぞれ別の人間であり、関連性も特に見えないものだった。
元々オレは人付き合いとか面倒ごとに巻き込まれるのは苦手なタイプだ。
そのはずだったのになぜかこの事件を少し調べていた。
それからさらに時間が経ち、家から少し離れた星来という地域まで自転車できていた。
この星来という場所は住宅街や商店街が並んでおり、坂を登り切ったところに高校があるくらいだろうか。
特に変わった場所ではないが、なんとなくネットを見て調べていたら偶然この場所に辿り着いた。
ネットを見た限りでは星に関する秘密や伝承が存在する、といった胡散臭いようなものであったが、他を探しても星来の同じ内容のものは見つからなかった。
さらに引っ掛かるのは伝承といった類は後世に語り継いだりしていくものだと思うが、それが記されたものがほぼ無に等しいということ。
民俗学に興味のある人間であれば食いつきそうな内容であるはずの秘密や伝承だが、それが明かされていないのはなぜか。
思い当たる中で一番可能性が高いのは『それを知ってはいけない』ということだろう。
この地域でもニュースにあった神隠しが起こる。
あくまで勘だがもしかしたら二つの内容は一点に繋がっていると踏んでいる。
だが、これ以上オレがこの件に頭を突っ込んでも無意味だということは分かっている。
今回何があってもこれでこの事件を調べるのも最後にすると決めた。
自転車から降りて周りを見渡す。
特に何も感じない。
再び自転車に乗り、坂の上にある高校を目指す。
しばらくして坂を登りきる。
正直かなり疲れた。
ここに通う高校生はほぼ毎日ここを登っているのかと思うくらいに。
目の前にはこの地域の高校である星来高校。
ここまできた割には特に何も成果がないようにも思える。
踵を返し、今まで来た道を戻ろうとする。
すると視界に1人の人間が映り込んだ。
その人間はフードをかぶっており、顔までは見えない。
だが一つだけ確実なことがある。
こいつは危険だということ。
こいつから『色』が見える。
それもニュースで見たあの『色』と同じだ。
もしあいつが犯人だったとして、オレは何ができる?
無論太刀打ちなどできるはずもないので、急いでその場を後にした。
それから数ヶ月が経つと、神隠しのニュースはめっきり無くなっていた。
さらに時間が経ち、中学生活を送っていると『色』について気がつくことがあった。
中学の生徒の中には色が付いている人がちらほらいる。
小学生の頃も一部の同級生の『色』が薄く見えていたが、中学になるとその色が少し濃い人間が多い。
そしてその『色』の濃い人間ほどなんらかの分野において特徴的な『力』を持っている。
言い換えるならば『力』とは基本的に生まれ持った能力と言った方が良いのだろう。
あくまで見てきた限りではその『色』によって身体能力や賢さなどの『力』はそれぞれ色が分かれているため、どんな力が備わっているかがなんとなくわかってきた。
オレはオレのような人間にあったことはないからわからないが、オレの『色』が見えるのも一種の『力』だ。
この『色』や『力』についてオレは誰にも話したことがない。
理由は単純だ。
こんな話をしたところで信じるような奴はまずいない。
それに話して厄介ごとに巻き込まれるのもごめんだ。
この『力』があったところで不便なことは特にないし、現状の生活が大きく変わることがない。
いわば無害な『力』と言ってもいいだろう。
そんなオレも中学を卒業し、高校生となる。
進学した先は代宮高校。
一番近い高校という理由で選んだが、オレはきっとここでも今までと変わらない無気力で怠惰な生活を送るのだろう。
そう、思っていた。




