第49話「バレンタインのチョコレート」
年明けから少し時間が経ち、2月になりました。
学校が始まって席替えがあり、みんなとは席が少し遠くなってしまったりなどのイベントがあったけど、今も変わらず仲良くやってます。
ちなみに今一番近い席は隣の席の夏妃ちゃん。
でもここのところ会話があまりない。
普段はみんなも一緒にいるから話が進むけど、よく考えたら夏樹ちゃんと2人でいる時ってどんな話をしていたかあんまり思い出せない。
私と夏樹ちゃんの共通点は姫城君に以外なく、私とは真逆の存在と言ってもいいのかもしれない。
気がつくと今日の授業は全て終わっており、放課後となっていた。
「綾乃ちゃん。このあとって時間空いてるかな?」
いつの間にか千奈ちゃんと梓ちゃんが私の席に来ており、そう声をかけられていた。
「……びっくりした。うん、大丈夫だよ」
それにしても千奈ちゃんから予定を聞いてくるのはなんか珍しい気がする。
「実は……」
あまり人に聞かれたくないことなのか、少し顔を近づけて話し始めた。
「もうすぐバレンタインデーだから柊くんにチョコをあげたいんだけど……」
バレンタインデー……確かにもうそんな時期だった。
基本的にあげる相手のいなかった私には縁があまり無かったイベントだった。
「できればどんなチョコがいいか一緒に考えて欲しくて……」
「なるほど……でも石川君ならなんでも喜んでもらえそうだけど」
「わたしのセンスってちょっとあれだし……考えてはいるんだけどあんまり自信が無くて……」
確かに千奈ちゃんはおしゃれに無頓着な時が長かったこともあって何を選べば良いかわからない部分があるのかもしれない。
「じゃあ手作りとかいいんじゃないかな? 千奈ちゃん料理とかできるし、チョコそのままじゃくてもケーキとか手間をかけられるものもいいかも」
「なるほど……」
「そうだ! 次の休日にみんなで作ろうよ。一緒ならアドバイスはできるかもだし。そういえば梓ちゃんも毎年桜田君にあげたりしてる?」
「……え? あたし? うん。あげてるよ。市販のものだけど」
「そういえば綾乃ちゃんは姫城くんにあげたりはしないの?」
言われて初めて気づく。
自分自身特に考えてもいなかったから言葉に詰まってしまう。
「……そうだね。あんまり縁のないイベントだったから気づかなかったけど、うん。姫城君もそうだけど、みんなに配るようにも作ろうかな」
「うん? もしかして俺の話してる?」
声のした方へ振り向くと、姫城君と桜田君と石川君がこちらへ向かってきていた。
「え!? いや、なんでもないよ!!」
「……? そう?」
咄嗟に誤魔化しちゃったけど、不審がられてないかな……。
その日はそのまま遊びに行ったりなどして解散することとなった。
合間をみて千奈ちゃんと梓ちゃんには『次の休日に材料買いに行こう』とだけ連絡しておいた。
〜〜
そして次の休日。
早速千奈ちゃんと梓ちゃんと合流し、近くのスーパーへ材料の買い出しに向かっていた。
「ところでどんなチョコにするかイメージはある?」
「うん。少し考えたけど料理はたまにするけどお菓子はあんまり作らないからケーキは難易度高そうだなって思って調べてみたんだけど、生チョコっていうのを作ってみようかなって」
「おー、いいね。梓ちゃんはどう?」
「あたしは料理できないし……2人が作るチョコにあやかろうかなって」
「うん。分かった! とりあえず頑張ろう!」
スーパーにたどり着くと、早速チョコレートコーナーへと向かう。
この時期ということもあってバレンタイン用のチョコが色々と並んでいる。
中には手作りチョコキットなどというチョコを溶かして固めるものが売っていたりしていた。
そしてその中に見覚えのある2人の女の子を見かけた。
「夏妃ちゃんとせんちゃん?」
「あれ? あやっち? もしかしてチョコの材料買いに来たりした?」
「よくわかったね」
「この時期にこのコーナーに来る目的って限られてくるからね」
「ということはせんちゃんも?」
「うん。なっちゃんと一緒に作ろうと思って。そうだ、よかったら私の家で一緒に作らない? 私はよくお菓子作るから器材とかは色々揃ってるよ」
「いいの? というか、私たち作る場所決めてなかったね……」
「確かに……それじゃあお言葉に甘えてわたし達もお邪魔しようかな」
無計画で進行していた自分に反省しながらせんちゃんの言葉に甘えるのだった。
〜〜
材料を買い、早速千ちゃんの家へと向かう。
せんちゃんの家は学校から見て梓ちゃんの家より先にある。
そして夏妃ちゃんとは家が隣同士で親同士が仲が良くそこからずっと一緒らしい。
「というわけで、早速始めていこうか!」
家にお邪魔し、せんちゃんがそう声をあげる。
せんちゃんが言うだけあって、あらかじめキッチンに用意されていたお菓子作り用の器具は種類が多く、私が知らないようなものまであった。
「とりあえず色々種類作っていこうと思ってるから一旦湯煎しようかな。なっちゃんお願いしていい?」
「湯煎って何だっけ?」
「チョコを溶かす作業だよ。本当はテンパリングっていう作業もあるんだけど、ちょっと難しいから今回は湯煎でやっていくよ」
「テンパリング……? とりあえずやってみる」
夏妃ちゃんが小さい鍋に砕いたチョコを入れる。
そしてそのまま火にかけていた。
「夏妃ちゃん!? 湯煎は火にかけないよ!?」
「え? 溶かすんじゃ……?」
「湯煎はお湯の熱で徐々に溶かしていくものだよ……」
「なるほど……」
私の言葉を聞いた夏妃ちゃんは大きめの鍋を用意し、それに水を入れて火にかける。
そしてしばらくしてお湯が沸騰し、その中にチョコをそのまま入れた。
「ごめん! そうじゃない!!」
「え、違うの?」
「説明不足でごめんね……お湯に直接チョコを入れるんじゃなくてチョコを入れた鍋をあっためる感じでお湯につけるんだよ」
言われた通り湯煎を開始する夏妃ちゃん。
すると徐々にチョコが溶けてゆく。
「おぉ、調理法って幅が広いのね」
湯煎で感動したのか夏妃ちゃんは表情からはわからないが結構楽しそうに作業を進めていた。
「なっちゃん楽しそう。それにしてもなっちゃんも作ってみようかなって聞いた時には目がまんまるになったよ」
「え、夏妃ちゃんが?」
「うん。私的には何かあると思ってるんだけどあやっち何か知らない?」
心当たりといえば姫城君だけど、それをせんちゃんにはいえない。
私も負けじとチョコ作りを始めてゆくのだった。




