第45話「みんなでのクリスマス」
石川君の働いている楽器屋から出た私たちは早速桜田君の家へと向かっていた。
とはいってもこの調子で向かうとおそらく二、三十分くらい早くついてしまいそうになるけれど、早めについたら何か手伝えることでも聞いてみようかな。
などと考えながら千奈ちゃんたちと話しているとすぐに桜田君の家の前にたどり着いていた。
早速インターフォンを鳴らす。
すると少ししてから玄関が開く。
中から出てきたのは小学生くらいの女の子だった。
「どちら様でしょうか?」
「あ、あれ? ここって桜田君の家だよね?」
「あぁ、兄さんのご友人でしたか。少々お待ちください」
とても礼儀正しい女の子だ……。
『兄さん』と言っていたけれど、もしかして桜田君の妹かな?
「金森さんたちもう着いたんだ。思ったより早かったね」
玄関の奥のほうから姫城君と梓ちゃんが顔を覗かせていた。
「外にいると寒いよー? 早く中に入ってー」
「うん。ありがとう」
といってもここは桜田君の家だから梓ちゃんが言うセリフでもないような気はするけど。
多分その辺は幼馴染とかの補正でどうにかなっているのだろう。
ともあれ、家の中に入れてもらうと先ほどの女の子が私たちのスリッパを用意してくれていた。
「ありがとう」
私の言葉に対し、コクリと一礼してから扉の向こう側へと向かっていった。
「それじゃあみんなこっちに」
先ほど女の子が入っていった扉を開く。
入ってみるとそこはリビングとなっており、キッチンでは桜田君が調理を行っているようだった。
「お、早いな。こっちは焼きあがるのを待つだけだ」
「いいにおいがするー」
おなかが鳴ってしまいそうだ。
「あ、そういえばその子は?」
女の子を見ながら桜田君たちに問う。
「こいつは俺の妹で翼」
「どうも。桜田翼です。いつも不甲斐ない兄がお世話になってます」
「やっぱり妹だったんだ。翼ちゃんは何歳?」
「14歳です」
14歳……中学二年生かな。
……やっぱり失礼かもしれないけど小学生にしか見えない。
「えっと、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「え? あぁごめんね。私は金森綾乃だよ」
「わたしは高垣千奈って言います。よろしくね」
「僕は石川柊です」
私の自己紹介に続いて千奈ちゃんと石川君も自己紹介を行う。
一通りの自己紹介を終えたところで翼ちゃんが口を開く。
「それでは綾乃さん、私のこと小学生っぽく見えるとか思いませんでした?」
めちゃくちゃ心の中読まれてる!!
「いえ、いいんですけど少々気にしているので」
「ご、ごめん。でも翼ちゃんはかわいいと思うよ!」
「そうだぞ。うちの妹はかわいいんだぞ」
「別にそういうのはいいですから」
実際マスコットみたいでかわいいと思うけどなぁ。
「それじゃあ私はそろそろ出ますね。兄さん、後のことは頼みます」
「おう、気を付けていって来いよ」
翼ちゃんは自分の荷物ををもって家を出たようだった。
「それにしても、桜田君に妹がいたんだね」
「まあ、特に話題に出すようなこともあまりなかったしな」
こうしてみるとやっぱりまだ知らないことはいろいろとあるようだった。
「こう言っては何だけど翔君よりしっかりしてる子だったね」
「おいおい……と言いたいところだが、実際その通りだからな」
「翼ちゃんは実際、翔より頭がいい子でとても気が利く子なんだ」
「あたしもたまに勉強を教えてもらうくらいには頭がいいんだよ!」
いや……それは年長者としてどうなんだろうか。
「兄さん。またご友人がいらっしゃいましたよ」
先ほど家を出たはずの翼ちゃんが戻ってきていた。
状況から察するに家を出た際に夏妃ちゃんたちと鉢合わせたのだろう。
夏妃ちゃんとせんちゃんも加わり、翼ちゃんは『今度こそ行ってきます』と言って家を後にしていた。
「桜田君の妹ちゃんめっちゃ可愛くない?」
「……礼儀正しい子だったわね」
「そうだろそうだろう、自慢の妹ではあるからな」
「その割には話題に出すことがないようだけど?」
「それは翔が翼ちゃんより劣ってるのを自覚してるからあんまり話題にしないだけだったと思うよ」
「ちょ、紗輝お前……」
楽しげな会話を楽しみつつ、クリスマスパーティが始まるのだった。
~~
「……そろそろ飲み物が切れそうだな」
パーティが始まってしばらく経ち、桜田君がそう呟く。
確かに用意された飲み物はあと少しだけとなっている。
「じゃあ私が買ってくるよ」
「大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。それに準備とかしてもらってたし」
「なら俺も行くよ。女の子一人じゃ危ないだろうし」
「わー、紗輝かっこいー(棒)」
「めちゃくちゃ棒読みで煽るのやめようか」
「あと、私は追加でお菓子とかでも買ってこようと思うけどみんな何かいる?」
「え、あれだけ食べてあやっちまだ食べるの!?」
皆の意見を聞いてメモを取り、桜田君の家を出て姫城君と共に近くのコンビニへと向かう。
無言の時間。
考えてみると、姫城君とこうして二人きりになるのもかなり久しぶりだと思う。
だからからか何を話せばいいかわからない。
「なんか久しぶりだね。こうして二人でいるの」
姫城君も同じことを思っていたようで、そう口にしていた。
「……うん」
だから私も短くそう答えた。
コンビニはそう遠いところになかったため、店内に入り買い物かごを取ってメモを見ながら商品を選んでいく。
会計を済ませて姫城君と外に出る。
姫城君は個人的にあんまんを頼んでいたようで袋から取り出して開封していた。
「姫城君って甘いもの好きなの?」
「うん。金森さんも半分食べる?」
「え? いいの?」
「はいどうぞ」
空いている手であんまんを受け取り、一口で頬張る。
少し熱かったが、口の中にあんまん特有の甘さが広がる。
「おいしー」
「ははっ、それはよかった」
何気ないようなこの瞬間。
少し恥ずかしいような、でもうれしくてそんな時間が続いてほしい。
そう思えるような小さな幸せ。
私はそんな感情を秘めながら姫城君と共にみんなが待っている桜田君の家へと歩き出すのだった。




