第42話「雪合戦」
早速私たちは中庭へと向かい、スタート地点を調べる。
さすがに雪が降り積もっていることから周りに私たち以外の人はいないようだった。
こうして中庭をよく見てみると障害物がそれなりに多く、スタート地点にする候補はだいぶ見つかった。
その間、桜田君は運動が苦手な梓ちゃんと石川君に先ほど言っていた高確率で勝つ方法というものを教えているようだった。
これも運動能力の差を埋めるためのハンデと桜田君は言って、それと同時に基本的な戦略とも言っていたような……。
「よし、これで準備はできたよ。あとは翔たちが戻ってきたらスタート地点にそれぞれ向かうだけ」
「ちょうどあっちの話し合いも終わったみたいだよ」
「それじゃあ早速始めていこう!」
戻ってきた桜田君たちにスタート地点の場所をそれぞれ伝え、スタート地点に向かう。
そしてスマホを取り出し、グループチャットにて開始の合図をしてゲームがスタートした。
とりあえず手始めに近くの雪をかき集め、雪玉を5個ぐらい作っていく。
作り終えた時点で物陰の向こうを確認する。
現状周りに動きはない。
とりあえず物陰からでて前へと進んでゆく。
すると雪玉が横から飛んできた。
ギリギリで雪玉を視界に捉えた私は間一髪で避けるが、その拍子に尻もちをついてしまった。
そして同じところから二投目が投げ込まれ、それもギリギリで避ける。
すぱんっ!
「……え?」
私の身体に雪玉がぶつかっていた。
それは二投目の雪玉でなく、別の方向から投げられた雪玉だった。
「ということは……」
私が最初の脱落者だった。
~~
そのあと千奈ちゃん、姫城君、石川君が順番に脱落し、残るのは桜田君と梓ちゃんだった。
「もしかしてこのルールってなかなか前に出れない?」
ふと感じた疑問を言葉にする。
「確かに開けた場所に出てきた綾乃ちゃんは仕留めるのが難しくなかったかな」
「違う場所から投げてきたの千奈ちゃんだったんだ……」
「翔君に聞いた高確率で勝つ方法っていうのも漁夫の利を生かした戦法だったから、物陰で様子を見るのがいいって教わりました」
「なるほど……というかそれ、私たちに話しても大丈夫だったの?」
「俺は金森さんがやられた時点でなんとなく気づいて、多分高垣さんも背を向けている金森さんを見て大体気づいてたんじゃないかな」
「え!? 嘘!?」
気づいていなかったのは私だけだったのか……。
そうこうしている間に、どうやら勝負は決したようだった。
勝者は以外にも梓ちゃんだった。
「やったー」
「くぅ……最初の脱落っていうのがすごく悔しい……ねぇ、時間はまだあるし、あと一回くらいやらない?」
「そうだね。あと一回だけやろうか」
他の人からも了承を受け、もう一度スタート地点へと向かった。
スタート地点に着いた私は先ほどと同じように雪玉を作り、物陰から周りをうかがう。
しばらく様子を見た後、急にスマホのバイブレーションが鳴った。
「うわっ!」
取り出してみてみると桜田君から着信が来ていた。
……なんでこんなときに電話を?
考えていると、少し遠くの場所から物音が聞こえる。
どうやら誰かが雪玉を投げているようだ。
物陰から顔を出してみてみると、姫城君に千奈ちゃんが雪玉を当てられていた。
そして油断をしていたのか姫城君の身体に雪玉が当たり、連鎖のように脱落していく。
私はその方向を警戒しながら物陰を利用して前へと進んでゆく。
途中、すぐ近くで石川君が脱落したようだ。
よく見てみると石川君を脱落させた桜田君が背を向けて屈んでいた。
狙いを定めて私は雪玉を投げた。
すぱんっ!
「えぇー!!」
見事に気づかれずに桜田君に命中し、当の本人は驚きの声を上げている。
残すのは梓ちゃんだけとなった。
残りが一人なら対処はそう難しくはないはずだ。
そう思った私は雪玉を10個ぐらい作り始める。
……10個は少し多かったかもしれないが、物音のした方向や動く標的に当てるぐらいなら十分だろう。
少し開けた場所に出て様子を伺う。
先ほどは人数の問題もあったことで不覚にも脱落してしまったが、今回の標的は一人だけ。
多分行けるはず。
しかし目立つように立っているにもかかわらず、音沙汰がない。
すると、私から見て左方向から音が聞こえた。
これは……梓ちゃんが設定しているスマホの着信音?
ともかくそこに向かって雪玉を投げた。
当たった形跡もなく、着信音が止まることもなかった。
どういうことだろうか?
鳴りっぱなしのスマホをそのままにしているのであればそこに私はいますよって知らせているようなものなのに……。
ふと可能性を考える。
少し考えてたどり着いた答えは『陽動』だった。
梓ちゃんはスマホをその場において何らかの方法で通話を行うなどの方法で音を鳴らしたのだろう。
言ってしまえばそこにはもう梓ちゃんはいない。
つまりどこかに移動したものだと思われ……
すぱんっ!
私の身体に雪玉が当たる感覚。
真横に梓ちゃんの姿があった。
……いつからそこにいた?
私の視界には入っていなかったから認識してなかったけど、特段隠れられるような場所も全くないはずだ。
それなのにどうやってここまで来たのだろうか。
「まさかまた梓が勝つとはなー」
いつの間にか近寄ってきていた桜田君がそう言った。
確かに二回連続で勝つのってすごいけど……。
「さっき梓ちゃんどこから来てたの? それにスマホの着信も……」
「スマホは着信じゃなくてアラームだよ。数秒後に設定してマナーモード解除してたんだよー」
「うっ、それ俺の戦略を利用したってことか。負けたよ」
つまり私がスマホの着信だと思っていたものは梓ちゃんのセットしたアラームで、それに気を取られていた隙に隣まで忍び寄っていたということなのだろうか。
想像した以上に策士だな梓ちゃん……。
「……それで、雪遊びをして付着した雪をあまりとれず仕方なくそのまま校舎に戻ったと」
「……はい」
校舎に戻った私たちは気温差によって溶け出した雪で若干濡れており、それを見たみなちゃん先生があきれるようにそう言っていた。




