第40話「誕生日パーティ」
日付は11月10日。
ついに梓ちゃんの誕生日となった。
学校の授業が終わり、千奈ちゃんと共に梓ちゃんをさの屋に近づけないように引き付けていた。
なぜかというと、昨日の夜に姫城くんから『サプライズのために梓の家を飾り付けたいから、申し訳ないんだけど明日の放課後に30分ほど梓を引きつけておいてくれないかな?』との連絡があったためだ。
どうやら飾り付け用の小道具も姫城君たちは作っていたようであとはその飾りつけを終えるだけとのことだった。
言ってくれれば私たちも飾つけようの小道具を作るのを手伝ったのにというと、姫城君は『梓と一緒にいてあげてくれればそれで十分だよ』と言っていた。
確かに私たちも飾り付けの小道具づくりを手伝っていたら梓ちゃんに即ばれしていたかもしれない。
そう言う配慮も考えて姫城君たちは考えてくれていたみたいだ。
「~~♪」
梓ちゃんはというと、鼻歌を奏でていた。
「なんか楽しそうだね、梓ちゃん」
「そうかな。誕生日だからかな。あたしって基本的に家族と翔と紗輝以外に祝われたことがないからちょっとうれしかったんだ」
「確かにわたしもその立場だったら嬉しいかも」
実は昼間に誕生日のお祝いを簡単にしていた。
これもサプライズのために怪しまれないようにとった行動の一つだった。
適当に時間を使い、姫城くんから準備ができたとの連絡が来たのでそれとなく梓ちゃんをさの屋方面に誘導するよう話しかけようとする。
……が、どう誘導するか全く考えていなかった。
「綾乃ちゃん? どうしたの?」
考え事をしている私を見て梓ちゃんは心配そうに声をかけてくる。
どうしよう……悟られないように動きたいんだけど……。
ぐぅぅぅーーー……。
突然私のおなかが鳴り響く。
「ぷっ、あはは。綾乃ちゃんおなかすいたの?」
「あはは……そうみたいだね」
「あ、そうだ。今から梓ちゃんのお店に行くのはどうかな?」
事情を知っている千奈ちゃんがこの状況に対してそう答えてくれていた。
「うん。いいよー」
梓ちゃんから了承を得たところで早速さの屋の方面へと歩きだすのだった。
~~
さの屋の前についた私たち。
梓ちゃんは扉の前に立ち、扉に手をかける。
そして扉を開けると……
パン! パパン!
破裂音が鳴り響き、梓ちゃんの頭にカラフルなテープがいくつかかかっていた。
「「「誕生日おめでとう!!」」」
「え? えぇ!?」
驚き戸惑っている梓ちゃんをよそに梓ちゃんを部屋の中央にあるテーブルへと連れてゆく。
「作戦は大成功だね!」
「作戦? どういうこと?」
何が何だかわかっていない梓ちゃんに事情を説明する。
誕生日パーティのためにサプライズで準備をしていたこと、準備が整うまで私たちがさの屋に近づけなかったことなどを聞いて、梓ちゃんは納得して気が抜けたのか、自然に笑いがこみあげていた。
「もう、なんかいろいろとびっくりしたよ!」
「ごめんごめん、というわけで」
私は鞄からラッピングされたプレゼントを取り出す。
「はい、誕生日プレゼントだよ!」
「用意してくれたの? ありがとー。開けてもいい?」
「うん」
梓ちゃんがプレゼントを開けて中身を取り出す。
「これって……エプロン?」
それは私がちゃんと生地から縫って完成させたエプロンだ。
「そうだよ。このお店特に決まったエプロンがあるわけじゃないみたいだったから良ければ使ってもらえればなって」
「ありがとー。使わせてもらうね!」
「わたしからは……はい。これ」
同じように千奈ちゃんもプレゼントを渡す。
「綾乃ちゃんに教わりながら作ったから少し不格好かもしれないけど」
「あ、なんか見たことある! なんだっけこれ」
「ミサンガだよ」
千奈ちゃんがあげたミサンガはピンクと黄緑のストライプのミサンガだ。
そのミサンガはつける位置や色によって様々な効果があるといわれている。
「ミサンガって手首とか足首につけてそれが切れたら願い事が叶うとかそういう類のものだっけ?」
「そうそう。だから一度付けたら外さないのが基本かな」
「なるほどー」
「それじゃあ次は俺たちかな」
姫城君がプレゼントを差し出す。
姫城君と石川君は一緒に考えるって言ってたけど、何を贈るのかな。
「わぁ、かわいい」
それはガラスでできたカップ型の置物で中に飴が入ったものだった。
確かに遠めから見ると飴がカラフルでかわいい。
「ん? 飴以外に何か……」
「あ、それは僕から」
カップから取り出したそれは三角形のキーホルダーだった。
確かこれはギターとかを弾くときに使う……
「ピックをキーホルダーにしたもの?」
「正解」
「あれってキーホルダーにできるんだ」
「最近キャラものとかのピックが増えたから結構人気みたいだよ」
「それじゃあ最後は翔だね」
「ああ、そうだな」
桜田君は梓ちゃんから少し目線をそらすようにして小さな小箱を差し出した。
あのサイズの箱は……
「結婚指輪?」
「さすがに俺にそんな財力はない。というかまだ高校生だし」
「あはは、実際そうだったら反応に困っちゃうけどね」
桜田君に許可を得て梓ちゃんは箱を開ける。
中身はこげ茶色の革ベルトの腕時計だった。
「まあなんていうか腕時計してなかったから、あったほうが家の手伝いとか便利かなって思って」
「そっか、ありがと」
優しく微笑む梓ちゃん。
そしてそれにつられるように笑みをこぼす桜田君。
見た感じとてもいい絵なんだけどなぁ。
「ねえ綾乃ちゃん、これ右手につけてくれない?」
ミサンガを持った梓ちゃんが私にそう言ってきたので、快く引き受けることにした。
「ちなみにね、このミサンガの色なんだけど、ピンクは可愛さ、黄緑は友情とやさしさをっていう意味合いがあるんだよ」
「へぇー、そういう効果があるんだ」
この意味合いに間違いはない。
でも私と千奈ちゃんは別の思惑があってこの色にしている。
ピンクは恋愛、黄緑は黄色と緑を別々と考えて向上と成長をという意味合い。
ちなみに利き手の手首につける場合、恋愛面での効果が期待されるという。
私たちは陰ながら応援しているというただのおせっかいだ。
「はい、できたよ」
右手首に結んだミサンガ。
左手には桜田君がプレゼントした腕時計。
どうやら気に入ったようだった。
ガラガラッ。
音を立てて突然お店の扉が開かれる。
今日はお客さんが来ないよう梓ちゃんの両親が貸し切り状態にしていたと思うんだけど……。
「お、やってるな」
入ってきたのはみなちゃん先生だった。
「みなちゃん先生!? 何でここに?」
「まあ、梓が誕生日って聞いちゃったからな。祝いにな」
「担任の先生ですか?」
「はい、梓さんの担任をさせていただいてる彩咲です」
梓ちゃんの両親に自己紹介をし、みなちゃん先生も誕生会に参加することとなった。
「特別なものは用意できなかったが、プレゼントだ」
そういってみなちゃん先生が取り出したのは一冊の本だった。
「『星と空の軌跡』? どこかで聞いたことがあるような……」
「ベストセラーになってる本だね。一人ぼっちだった少女が一人の少年と出会って学園生活を送る物語だよ」
姫城君がそう教えてくれたことでようやく思い出した。
テレビでも取り上げられた注目の一冊だとか。
「その作者、まあ二人とも私の友人なんだが、頼んでサイン本にしてもらったのがそれだ」
「えっ!? サイン本!? というか友人!?」
梓ちゃん以上に姫城君がとても驚いている……。
そっか、姫城君は小説家になりたいんだったっけ。
「その話は追々話すとして、今日は梓の誕生日なんだ。もっと祝おう」
それを聞いて姫城君は落ち着きを取り戻し、みなちゃん先生を交えて誕生日パーティが再開されるのだった。
どうも月見です。
前回涼める話云々と言っていましたが欠片もありませんでしたね。
次回は差し込みとか考えつかない限りクリスマスとかその辺の話になるかと思います。
というわけで次回もお楽しみに!




